シラタマホシクサやミカワシオガマ、ウメバチソウが見ごろ
11日から矢並湿地を一般公開(’02-10)
中心市街地から東に約6キロメートルに位置する愛知高原国定公園内にある矢並湿地(矢並町)の今年の一般公開が、11日から13日までの3日間、午前10時〜午後3時(雨天公開)に行われます。期間中、豊田市自然愛護協会(会員数:500人)の会員が、11日は4人、12・13日は6人常駐し、訪れた人に観察案内や湿地保護の呼び掛けを行います。ただし東西湿地のうち、西湿地のみの公開で、観察用木道からのみの観察となります。

現在同湿地では、東海地方固有湿地やその周辺にのみ分布する東海丘陵要素植物群であるシラタマホシクサ(ホシクサ科/環境省レッドデータブックの絶滅危ぐU類)やミカワシオガマ(ゴマノハグサ科/環境省レッドデータブックの絶滅危ぐTB類)ウメバチソウ(ユキノシタ科)などの花々が可憐に咲き乱れています。

同湿地は、三方を花崗岩を基盤とした山地が取り囲み、谷を風化した花崗岩の砂や砂質粘土がたい積してできています。湿地は、市道を挟み東西に分離しており、東湿地500平方メートル、西湿地2,500平方メートルの合わせて3,000平方メートルになります。東海地方固有湿地やその周辺にのみ分布するシラタマホシクサ(花期8〜10月)やミカワシオガマ(花期10月)、ヘビノボラズ(メギ科/花期4〜5月)、トウカイコモウセンゴケ(モウセンゴケ科/花期6〜7月)など東海丘陵要素植物群が自生しているほか、トキソウ(ラン科/花期5〜6月)やサギソウ(ラン科/花期7〜8月)、ムラサキミミカキグサ(タヌキモ科/花期7〜10月)など貴重な植物やハッチョウトンボ、ヒメタイコウチ、アキアカネ、ゲンジボタルなどの昆虫が生息しています。

この湿地は、豊田植物友の会によって1973年(昭和48年)に偶然発見されたもので、翌74年(昭和49年)からは豊田市自然愛護協会が保護管理してきました。75年(昭和50年)には湿地植物の保護のためにフェンスで囲み、以後同愛護協会が年5〜6回の巡視、年1回の枯れ草刈りをし、一般の人目に触れることなく守られてきました。また、99年(平成11年)4月には、地元に矢並湿地保存会(会員数:49人)が発足し、一般公開にあわせて湿地周辺の草刈りやごみ拾いをしています。

保護のために湿地をフェンスで囲み(昭和50年3月実施)、一般の立ち入りを禁止してきましたが、自然に関する関心が高まる中、実際に湿地を見てそのすばらしさを多くの人に知ってもらい、湿地の保護を図ろうと、98年(平成10年)7月から2カ月間掛けて約570万円で観察用木道を東湿地に36メートル、西湿地に34メートル(デッキ2基あり)、周遊路を西湿地に180メートル整備し、直接湿地を踏み荒らすことなく近くで観察できるようにし、同年9月(9月28日〜10月4日)に初公開しました。昨年は10月(10月5日〜7日)に期間限定で公開しましたが、今年は今回が初公開で、通算8回目の公開となります。昨年のこの時期の公開では、3日間の公開で市内外から780人が訪れ、過去7回の合計人数は5,823人にのぼります。

現在花を楽しむことのできるシラタマホシクサは、鉄分の多い酸性の水湿地に生える1年草。根はひげ状で白く、葉は根元から立ち、線形で長さ14〜20センチ・幅1〜3ミリで葉先は針のようにとがっています。茎はほとんど発達せず、根元から葉茎を1〜5本立て、20〜40センチになります。茎の下部には3〜9センチの鞘(さや)が付き、頭花は直径6〜8ミリで全体に短い白毛が密生し、多数の小花からなる植物です。花茎の先端に白い球状の花を付けて群生する様子はとても美しく、市内では群生地が10カ所確認されています。見ごろは10月上旬まで。

また、ミカワシオガマは、山地の草原に生える多年草のシオガマギクが湿地で変化したものです。シオガマギクに比べ、葉が小さく枚数の多いことが特徴で、約30〜50センチの茎先に赤紫色の花を咲かせます。市内では7カ所で確認されています。矢並湿地には、約60株が自生していますが、環境省のレッドデータブックによると、自生のミカワシオガマは約600株と推定されています。見ごろは10月中旬まで。

ウメバチソウは、山間湿地に生える多年草。梅鉢紋に似ていることから名付けられました。秋遅く(10月末)まで梅に似た白い花を咲かせます。高さは20センチメートルほどです。

エコライフ課では「市街地から近距離の場所に、自然や貴重な植物が多くあります。特にミカワシオガマは、自生する東海地方では1番数が多く大変貴重ですので、多くの方におこしいただきたい」と話しています。