淡路風力発電事業

CEF南あわじウインドファーム事業&関電淡路北部風力発電事業

ひょうごの環境影響評価審査会は何を為したのか

 「銭函のように、これほど建設前の経緯がネットと言う、一応公開で知りうる状態で経過情報が詳しく知りうる例は、私の知る限りでは初めてだと思う。本来はこうあるべきなのだが現実としては稀有な例となったと言えよう。」とネットで知る「風車建設&騒音被害への道」 小樽銭函、岡山津山、兵庫北淡路、和歌山海南で述べた。だが、実はと言うほどでもないが、これ以前のモノとして、兵庫県における「平成17年(2005年)CEF南あわじウインドファーム事業」、「平成20年(2008年)関電淡路北部風力発電事業兵庫県環境影響評価審査会会議により審査された際の議事録がひょうごの環境影響評価 環境影響評価審査会会議録としてネット上にある。

 これを見てみると、今後の風力発電アセスに於いて主体となるであろう「環境影響評価…」なるものが現在有る風車問題解決に一体全体どれ程の効果があるモノなのか銭函の場合と合わせて考えてみてみたい。なお、議事録の長々しい文の全体はそれぞれ以下のリンク先をご覧頂けば知れるところで、当サイトとしてはそれぞれの議事録で気になったセンテンスのみを列挙する。


1.CEF南あわじウインドファーム事業(南あわじ)

@環境影響評価審査会総風力発電所部会議事録 日時:平成17年12月8日(木)14:00〜17:50

(委員)条例に基づくものではないとのことであるが、どの程度のことを言えるのか。
(事務局)経過措置案件であるが、知事の助言を行う必要があり、ご意見をいただきたい。 風力発電所の大規模案件が数件出てくるようになり、10月に指針を制定して対応す ることとなった。
(委員)水質が対象項目となっていない。
(事務局)項目については、騒音、地形・地質、植物、動物、生態系及び景観に絞り込ん だ。ただ、水質についても、お気づきの点があれば、質問対象となる場合もあると考えている。

(委員)審査をする場合、何カ所か候補があり、その中で調べると、この場所であったと の比較ができると分かりやすい。(朝来市を含め)この2カ所はやりたいとの考えなのか。まだ候補があるのなら、他の候補を探すことになるのか。
(事業者)今の質問は回答しにくい。今回の2カ所は全国的に見てもすばらしい風である。 他にこれに勝る風はない。県の指針は、事業者にとって、プロセスの非常に後の段階で、経済産業省の補助金の決定も地元合意も得た段階で出ている話であり、ここはダメだからあっちに行くとの考え方は、地元との約束から考えると非常に難しい。

(事業者)調査後に風車の移動があった。風車による改変を網羅していないことは事実。
(委員)発生騒音レベルは、平均風速を使って予測している。有識者意見で、基準は満足 しているが、不確実性があるとしている。騒音は発電量に比例するから、発電量が上がると騒音レベルはあがるのではないか。防音対策はどうするのか。
(事業者)予測式は「風力発電導入ガイドライン」を使っている。Leqで評価しているから、平均風速を使っている。風車自体はカットアウトがあり、どんどん羽根が回る ことはない。また、風が強くなると暗騒音が大きくなり、かき消される。不確実性の中で、影響はあるとしても、諸条件を考えて軽微であるとしている。
(委員)どのぐらい風速が上がるとカットアウトになるのか。また、平均風速は。
(事業者)平均風速は、6.3m/sで予測している。25m/sでカットアウトになる。その騒音は、105dB程度で平均風速時に比べ10dBぐらい上がる。

(委員)生物の場合、事後監視調査は絶対必要である。
(委員)平成10年の植生調査と今回の調査で、大きく変わっていないことを確認したのか。
(事業者)学識者の意見を受け、調査を実施し、平成10年と違いがないことを確認して いる。


A環境影響評価審査会風力発電所部会議事録 日時:平成17年12月22日(木)10:00〜12:00

(委員)渡り鳥の調査は。
(事業者)有識者によると、鳴門海峡が渡りのルートになっている。また、タカの渡り全 国ネットワークが鳴門山展望台(四国)で調査をしている。予定地がルートにかかるのではないかとの指摘に対しては、調査期間を長くして実施したが、そのような目立つ行動は確認されなかった。

(委員)風車の騒音や低周波は、機種による差があるのか。
(事業者)機種による差はある。メーカーから機種毎のデータの提供を受け、環境影響評価を行っている。
(委員)既存の風力発電所における影響や苦情の有無及びその対応は。
(事業者)既存の風力発電所で、金属製部品による音の発生があり、プラスチック製部品に交換した事例がある。今回は、当初からプラスチック製部品を使用する。

兵庫事業について協議
(委員)映像を見ると相当な規模の道路を造り、土地の改変を行う。当初計画の場所(段ヶ峰)では問題があるが、今の計画の場所で大幅な改変を行わないなら、地形・地質の点に限れば、やむを得ないと思う。
(委員)地元の意見は聴くのか。
(事務局)今後、朝来市に聴く予定である。また、図書にはサンショウウオ関係で計画地の変更を行った旨の記載があるが、どのように考えればよいか。


B平成18年1月26日 兵庫県知事 井 戸 敏 三 様 環境影響評価審査会
会長 藤井 正美 CEF南あわじウインドファーム事業に係る環境影響評価準備書の審査について(答申)
平成17年12月8日付け諮問第102号で諮問のあった標記のことについて、下記のとおり答申します。

標記の事業については、風力発電所環境配慮暫定指導指針の経過措置案件であり、環境の保全と創造の観点から審査を行った。

風力発電所は、建設に際しての土地の改変面積が小さく、また稼動後の環境負荷が少ないことから、今後の環境適合型社会の形成に資する施設であり整備を推進するべきものである。
図書では、自然環境の一部を改変するものの、対象事業実施区域の変更により騒音の影響を低減する等の配慮を行うことから、環境への影響は回避・低減されているとしている。
しかしながら、対象事業実施区域の周辺地域は、淡路地域固有の地形・地質や植生等豊かな自然環境を擁し、これらを基盤とした生活が営まれている地域であることから、土地の改変や風力発電施設の建設により、自然環境や生活環境に影響を与えることも考えられる。
このため、事業の実施に当たっては、専門家の指導及び助言を受け、図書に記載されている環境保全措置を着実に実施するほか、実行可能なより良い技術の導入に努めるとともに、以下の点に留意する必要がある。
1 騒音
風力発電所の運転に伴う騒音については、影響はないと予測されているが、近傍の住宅地域において、一般騒音の環境基準(昼間55dB、夜間45dB)を達成させること。また、予測に当たり平均風速を採用しており、強風時において環境基準値を超過するおそれがあるため、供用後環境監視調査を実施し、環境影響の有無を検証すること。
2 動物
鳥類への影響については、風力発電施設の存在による移動経路の遮断・阻害やバードストライクへの影響は軽微としているが、淡路島は鳥類の生息地及びタカ類の渡りのルートでもあることから、供用後環境監視調査を実施し、必要に応じて環境保全措置を検討すること。
3 植物
建設用道路及び風力発電施設の建設位置等土地の改変部分についての植物相調査を事業実施前に実施するとともに、貴重種が確認された場合には、事業実施前に専門家の指導及び助言を受け、適切な措置を講じること。また、工事完了後裸地等の植栽による修復に努めること。
4 景観
稜線上に大規模な風力発電施設群が出現することから、その形状及び色彩等について検討し、周辺の景観との調和を図ること。また、検討に当たっては専門家の指導及び助言を受けること。
5 その他
環境監視調査結果については、適宜公表すること。また、現時点では予測できない事項や環境に著しい影響が生じるおそれがある場合には、関係機関と協議し、必要な措置を講じること。また、事業の実施に当たっては、事前に地域住民に十分説明を行うとともに、要望・苦情等に適切に対処すること。


CCEF南あわじウインドファーム事業に係る環境影響評価準備書に対する知事の助言について

2 知事の助言の概要
 (1)全体的事項
   対象事業実施区域の周辺地域は、淡路地域固有の地形・地質や植生等豊かな自然環境を擁し、これらを基盤とした生活が営まれている地域であることから、事業の実施に当たっては、専門家の指導及び助言を受け、図書に記載されている環境保全措置を着実に実施するほか、実行可能なより良い技術の導入に努めるとともに、以下の点に留意する必要がある。
 (2)個別的事項
  ア 騒音
   ・近傍の住宅における環境基準(昼間55dB、夜間45dB)の達成、供用後の監視調査の実施
  イ 動物(鳥類)
   ・風力発電施設の存在による移動経路の遮断・阻害やバードストライクについての供用後の監視調査の実施

  ウ 植物
   ・土地の改変部の植物相調査の実施及び貴重種が確認された場合の適切な保全措置
   ・土地の改変により生じた裸地等の植栽による修復
  エ 景観
   ・風力発電施設の周辺景観との調和(形状・色彩等の検討)
  オ その他
   ・環境監視調査結果の公表
   ・予測できない事項等についての関係機関と協議及び必要な措置
   ・事業実施に当たっては、地域住民への事前説明及び要望・苦情等に適切に対処すること。


と言うことで、建設されたのであろうが、それ以前、その間、その後の詳しい経緯については、「淡路島の風力発電について」に詳しく、それによれば、下記のようであり、現在、様々な問題が起きているようだ。

・平成12年11月1日から平成13年10月31日まで西淡町で風力発電を目的とした風況調査を開始した。
・平成12年11月1日 西淡町による風況調査開始
・平成13年10月31日 西淡町による風況調査完了
・平成14年1月1日 アキツ地建(コンサル会社)が風況調査に入る。アキツ地建・きんでんと組む 
・平成15年1月1日 風況調査継続
・コンサルタント会社アキツ地建が倒産。
 アキツ地建の所長をやっていた橋本氏は、建設段階からずっと地元との交渉や工事現場で指揮をしており、現在もCEF南あわじウインドファームの役員である。
・平成16年1月1日風況調査継続。
・平成16年5月に南淡町で小泉内閣のタウンミーティング開催、武部(勤)農水相として来る。
・平成16年10月22日CEF社は西淡町役場で協議。
・平成16年11月11日、別荘地「晴海ケ丘」に対して「法や条例に係る事業でないから県の指導はない」と西淡町が説明している。
・平成16年12月16日、淡路西淡リゾート株式会社から株式会社ピュア(別荘地晴海ケ丘の事業主)に西淡リゾート社所有の土地の一部を譲渡の覚書締結。
・平成12年21日、上記の件で売買契約締結。
・平成17年1月11日三原郡四町(緑、西淡、三原、南淡)が合併して南あわじ市が誕生した。

※南あわじウインドファームの風力発電事業は、合併のドサクサに行われ、役所の年度変わりに補助金申請締め切り間際に慌てて滑り込んだと思われる。

・平成17年1月14日、新しく風況調査の40m調査計の設置計画といよいよ本格となっていく。
・平成17年1月25日南あわじ市都市計画課で事業の説明をする。
・平成17年1月26日松尾議員、株式会社ピュア事業計画に説明。
・平成17年1月26日川上議員に説明。(誘致に大きく関わった議員)
・その後、伊加利区長と菅志知川区長、丸山漁業組合長、当時の阿那賀地区選出議員へと順次説明していく。
・平成17年2月1日CEF社の担当者が株式会社ピュアを訪問し、ウインドファームの概要をきわめて簡単な説明をした。
・平成17年2月8日竹中議員に説明。
・平成17年2月23日クリーンエナジーファクトリー社長鎌田宏之氏南あわじ市長と面談。
・平成17年3月下旬、丸山水利権者、晴海ケ丘の販売会社ロータスカンパニー社長に事業内容を説明。
・平成17年4月25日CEF鎌田社長兵庫県知事と面談。
・平成17年5月15日石川県中島町虫が峰風力発電所へ丸山地区役員(馬部氏、原氏)見学に行く。
・平成17年5月29日丸山地区愛媛県佐田岬の風力発電見学。
・平成17年9月3日津井地区に風力発電の説明会(本村、西本村)が行われた。
・平成17年9月16日南あわじ市長に鎌田社長面談。
・平成17年9月20日CEFから兵庫県知事に林地開発許可申請が出される。
・平成17年10月26日風力発電所環境配慮暫定指導指針(兵庫県)
・平成17年11月 日に起工式(南あわじ市市長と議員数名出席した)

平成17年12月8日準備書について諮問(環境影響評価審議会)
平成17年12月22日準備書について審議(環境影響評価審議会)
平成18年1月26日環境影響評価審議会より兵庫県知事宛に答申。
平成18年1月31日兵庫県知事から事業者南あわじWFに環境影響評価準備書に対する助言
・平成18年2月15日兵庫県知事から工事許可。
・平成18年3月30日南あわじ市丸山地区(会長菅育郎)と工事業者株式会社きんでんと工事協定書結ぶ。
・平成18年3月30日南あわじ市丸山地区(会長菅育郎)と風力発電事業者南あわしウインドファーム社と事業協定書結ぶ。


2.淡路北部風力発電事業(北淡路)

@淡路北部風力発電事業(仮称)に係る環境影響評価準備書の縦覧について平成20年4月8日〜5月7日

3 環境影響評価準備書に対する意見書の提出期間及び提出先
 (1) 提出期間       平成20年4月8日(火)から同年5月22日(木)まで

 ※即ち、意見が有れば6週間以内に「環境の保全と創造の見地からの意見」が有れば出しなさい、と言うことである。それらを踏まえてなんだろうけど、実際には提出期間2週間前の1ヶ月後5/9から環境影響評価審査会は始まった。


A-1環境影響評価審査会風力発電所部会議事録 日時:平成20 年5月9日(金)14:00〜16:00

11 議事概要

(委員)p5-1-7 のNo1地点の夜間の総合騒音レベルは45dB とある。これは環境基準値と同じ値で、到達騒音レベルの44dB が効いている。誤差が生じれば基準を超えることになるが、p1-10 に記載されている定格風速12.0m/s あるいは出力2000kW といった数値に基づいて、平均風速で計算した予測値の精度についてはどう考えているのか。
(事業者)精度をどう確認するかだが、風車メーカーは自らも実験計測して、その基本設計機器のスペックを満足するしきい値以下の製品としてしか出さないとメーカーは保証している。また、メーカーは第三者認証機関の認証を取得しており、当方としては、それを信用している。

(委員)平均風速ではなく、風速毎に騒音レベルを計算し、それらを合成して予測値とするべきではないか。
(事業者)風速毎に予測しても、風速に伴って暗騒音レベルのエネルギーが大きくなるため、総合騒音レベルは暗騒音レベルに近づくことになる。環境基準は風速毎に定められているものではない。機械の影響が一番象徴的に捉えられるであろうと考え、平均風速時について予測を行った。

(委員)風速が小さなところも選ばなければならなかったということだが、事業実施区域の平均風速及び最大風速はいくらか。
(事業者)平成15 年から2年間測定を行ったが、高さ30m で平均風速は6m/s弱である。一般的には風力発電には6m/s 以上の風速が必要と言われており、それよりも若干下回っている。p2-1 に示しているとおり、淡路市郡家における気象データによると、最大風速で18m/sとなっている。
(委員)既に稼動している同機種の風力発電設備について、どれだけの風でどれだけの騒音が発生するのかを調査して確認することはできないのか。元々静かな場所に騒音発生源ができると基準以下でも苦情が発生することがあるので、考慮しておくべきである。
(事業者)確認しておく。また、風車ができた後も継続して測定を行い、地域住民に説明させていただきたいと考えている。


(委員)p5-4-24 で、定期巡視点検を利用してバードストライクの有無を確認するとあるが、この定期巡視点検はどういう形で行われるのか。また、どの程度の頻度で行われるのか。
(事業者)設備の保安と環境への影響を含め、現地を見る定期巡視点検は月1回。設備の保安については6ヶ月あるいは1年に1 回の定期点検を行うことを考えている。


A-2 環境影響評価審査会風力発電所部会議事録 日時:平成20 年7月7日(月)10:00〜11:35

9 議事概要

(委員)最近、風力発電設備の事故が多発していると聞いているが、強風時のカットアウト等の制御を適切に行う必要がある。保守点検等をしっかりとやってもらいたい。資料3−3、別紙1によると、現況騒音は1〜2m程度の風速時のものであり、それと各風速における到達騒音を合成しているが、それぞれの風速時における暗騒音を合成しないと意味がないのではないか。暗騒音の風速補正はできないのか
(事業者)各風速の風騒音はつかめていない。これについては、運用後に、風車を止めて確認させていただきたい。

(委員)バードストライクについて、調査頻度は月1回と聞いているが、それではいつ鳥が風車に当たったかがわからないし、鳥の死体も1ヶ月間もそのままにあるとは思えない。月1回では少ないのではないか。調査はどのくらいの頻度で実施すれば、有効なデータが得られるものなのか。
(事業者)4月頃の春季と10 月頃の秋季のタカ類の渡りの時期には、飛翔状況を確認しながら、バードストライクの発生状況を現地確認する。それ以外の時期には、設備の保安上行う月1回の定期巡視点検時に確認することを考えている。調査頻度については、状況を見つつ、地域住民も含めて相談しながら検討したいと考えている。タカ類の渡りの主要ルートにもなっており、渡りの期間が最重要であると考えている。

(委員)資料3−3、同機種の騒音実績値について、「音源が見通せる場合と見通せない場合の減少事象を確認しました。」とあるが、確認したというのは理論上のものか、それとも実際に測ったのか。
(事業者)実際に稼動している出力1500kW の風車において、現地で騒音測定した。風車から200m程の地点に、風車を直視できない小高い丘があり、その裏側で測った結果、文献等にあるとおり、5dB 程度の減衰が確認できた。

(委員)資料3−3「バードストライクの有無の確認について」で、「・・・バードストライクの可能性は低いと予測評価しました。しかし、国内での調査事例や知見は多くないため、専門家の指導を受けながら、自主的に工事中及び施設供用後に、渡り鳥調査を行う計画であり、この渡り鳥調査の中で、バードストライクの有無の確認を含めて計画します。」とある。バードストライクの可能性は低いという予測評価をしたのに、「しかし、国内での調査事例や知見は多くないため」とすると、予測評価の仕方が間違っている、あるいはおかしいということになるのではないか。可能性が低いと予測評価したなら、それをもっと前面に出すべきではないか。

(委員)鳥は生き物なので渡りなどの行動に変化があって、1年程度の調査ではわからない。杓子定規に評価するのは難しい。ただ、それを省いても地形的によくない。鳥は通常、突端から海を渡っていく。CEF 南あわじウインドファームについては、陸の幅が広く、また渡り鳥の数も多くないので、そこでは甚大な影響は出ないと判断した。ただ、今回はいろんな対策を考えているようだが、対策が難しい。渡りの時期には風車を止める等の対策をとるとしても、渡りの最初を確認するには大変な労力が必要である。かなりの数の鳥が渡ってくると思われるので、その間風車を止めるとなると、長い時間止めることになる。また、ここは留鳥であるハヤブサの生息も確認されており、繁殖もしているので移動するときにぶつかる可能性もある。つまり、いろんな対策をとったとしても、ここに風力発電設備を設置するのは難しい。完成後に渡りに大きな影響が出ると、事業者にとってもイメージが悪くなり、大きな損害が出ることになる。バードストライクの可能性の少ない風車ができればいいとは思うが、このブレード式の風車だとどうしてもバードストライクの可能性はある。無理にここに建設しなくてもよいのではないか

(委員)1つ当たっても駄目なのか、いくつ当たったから駄目というのか、判断するのは難しい鳥の渡りの時期に風車を止める等の対策があればと思うが難しい。先ほど議論のあった同機種の風車の騒音の測定結果について、騒音データが出てこないのは、問題がある所だから出てこないのか。騒音データを集めれば、風車における騒音問題の解決にも役立つと思うが、データを集める動きはないのか。
(事務局)全国的に風力発電設備の例はあるが、一元的な騒音データは掌握していない。事務局が資料4−1、4−2により住民意見書及び公聴会記録書について説明。
(委員)公聴会意見に、この場所に風力発電設備を建設するのは望ましくないとあるが、望ましくないから設置するなとなると、これは全然判断の基準が違う。誰がどこでどう最終的に判断するのかというと、日本でも、世界でも決まっていない。よって望ましくないものは、望ましくないと率直に申し上げる以外に方法はない。ここで取り上げられているのは、サシバ中心であるが、サシバは集団で飛ぶので目につきやすいからであり、他にもハチクマ等の猛禽類以外にも渡りを確認しにくい種はいる。

(委員)公聴会記録書を見ると、公聴会公述人と私は、ほぼ同意見である。場所がよくない。鳥は夜にも多く渡るもので、調査が困難なので仕方がないが、夜間のデータがない。鳥目は一部の鳥だけであって、ほとんどの野鳥は夜間も見えている。ただし、昼間ほどよく見えるのではないので、昼間よりも夜間に多くの鳥がブレードに当たる可能性が高くなることも考えられ、やはりこの場所での風力発電設備建設は難しい

(委員)本事業の前提として、バードストライクが起こる可能性が低いと予測するから風力発電設備を設置するということになっていて、バードストライクの可能性が高ければ造らないということですねある程度鳥がぶつかるということを前提にして、エネルギー問題だとか、色々重要だから、この場所に造るということではなく、バードストライクの可能性は低いと予測されるから、造るということですね
(事業者)この地点を選んだ経緯として、1つ目は、淡路市が農業振興計画を含め、積極的に風力を誘致されたこと。2つ目は、土地改変が少ない場所で、自然災害を危惧しなくても良いこと。3つ目は、淡路島に発電所がないので、非常災害時の電源として有効であること。そして、渡り鳥ルートではあるものの影響が軽微であること、これらを総合的に判断して決めました。
(委員)そういうことを聞いているわけではない。鳥への影響も考えたけれど、バードストライクの可能性が低いと予測されるというのが、1つの要因になったということであり、可能性が高ければ、計画を止めていたという理解でよいのか。
(事業者)そのとおりです。


A-3 環境影響評価審査会風力発電所部会議事録 平成20 年7月30 日(水)14:00〜16:00

(委員)騒音について、No.5 地点で基準を超過するとのことだが、受音点側での対策はとりやすいとの理解でよいか。
(事業者)そう考えている。
(委員)2dB 下がるということは、No.2 地点も基準内におさまるということか。
(事業者)そのとおりである。

(委員)風力発電の技術者の不足により、故障が増加して、原因調査ができないとか、60 日から100 日程修理に要するといった、風車建設のモチベーションを下げるような状態が起きているとの報道があったが、風車の安全面で問題はないのか。
(事業者)日本ではヨーロッパのメーカーの風車を使用している場合が多いが、技術内容については、保守・運用に必要な技術が全て開示されている状況ではない。開示されている技術範囲については、保守サービス会社及び事業者で全て対応できるが、それを超える範囲については、自ら補修はできない。このため、部品交換等が必要な状況になっても、技術診断後の手配となり、どうしてもその対応に時間がかかる。しかし、修理に時間がかかっても風車を停止しているので、収益は下がるが、保安上の問題は無いと考えている。また、日本の風力事業者が協力して、ヨーロッパのメーカーに、日本国内にあるメーカー系列の保守サービス会社の技術要員の質及び量の補強を申し出ているが、世界的に見て、日本は風車のシェアが低く、十分な対応がなされていないという現実がある。

(委員)大規模な事業を進める上で、今までは、事前の環境影響評価は行われても、建設・稼働後にどうなるかの調査が十分ではなかった。風力発電設備がどれほど鳥に影響を与えるかについては、予測が不可能なところがある。今回、課題に対する事業者からの回答によると、風車建設後のフォローアップについて、どういう体制をつくり、どういう調査をして、どう対策をとるのかを示しており、高く評価する。ただ、いくつか確認したい。バードストライクが起こったかどうかの調査の頻度については、2回/週としているが、少ないのではないか。死んだ鳥がその日のうちに無くなることも考えられる。佐田岬半島でバードストライクが発生していないとは信じられない。これは調査頻度が少ないことによるものではないかと思う。毎日、朝夕の2回くらいの頻度で調査しないと見つけられないであろう。調査会を設置するとのことだが、構成員の選び方にも関係してくるが、調査会の権限についてはどう考えているのか。例えば調査会で風車を止めるべきであるという意見が出た場合、それに従うのか。そのあたりが明記されていないので、それを見てこちらとしても検討したい。予防策が書かれていてよいと思っているが、これだけのことをしてもバードストライクがゼロというのは無理と思う。また、どの程度の被害レベルで次の予防策を考えるかも検討する必要がある。

(事業者)バードストライクが発生した際は、速やかに調査会の検討結果を受けて風車を止める等の対応をとる。場合によっては、事業者自ら風車を止めて、その後どうするかについては、調査会の中で相談したいと考えている。もし、鳥が風力発電設備を回避するようなら、その年ごとにバードストライク調査頻度を減らすことを調査会に相談しながら検討したい。いつまで調査するかについては、バードストライクが起こる可能性は少ないと評価しているが、もし頻繁に起こるようなら継続して調査する必要があるし、それは状況を見て判断したい。

(委員)資料4−2、p2,3で、アメリカと日本におけるバードストライクの状況が記載されているが、このデータを見ると、バードストライクの発生件数は少ないように見える。いろいろなデータを見ても、バードストライクの頻度は少ないと言えなくもないように思う。そうすると稼動してから1年間は毎日観察すればはっきりとしたデータが出るのではないか。鳥類学会がそういったデータを出さなくてはならない。それがないから鳥が当たるのか当たらないのかという議論になる。このデータからすると、鳥だけの問題をとらえると、風力発電は問題ないように思うが、どうでしょうか
(委員)なるべく多くの頻度で調査しないとなかなか実態はつかめないでしょう。日本鳥学会鳥類保護委員会でこういう話題も出てきている。学会として、どれだけやればいいという指針は決まっていない。個人的にバードストライクの調査をされている方に言わせると、もっと多くの鳥が死んでいるそうである。それにもかかわらず、表に出てくるデータでは少ない。よって、基本的にこの資料は信用していない日本鳥学会、野鳥の会できっちりやるのも必要かもしれないが、今までそういうデータは出ていない。事業者側で調査されることを希望する。

(委員)バードストライクの発生個数の調査方法についてだが、鳥類学会では調査方法のガイドラインをつくっていただきたいと思う。そうすると、各データを比較することができるようになる。
(委員)佐田岬ではバードストライクが確認されていないとのことだが、いつから風力発電設備が本格稼働しているのか。また、どのような調査をしたのか。
(事業者)佐田岬で最初に建てられたのが4年前で、それから毎年増加している。現在の46 基となったのは昨年である。また、事業者は4、5社ある。バードストライクの有無については、地元の伊方町から聴取したものである。調査頻度については、事業者によってバラバラである。
(委員)バードストライクは、見逃してしまう可能性もあるし、より詳細に調べてもらいたい。
(委員)鳥類について、資料3の情報が正しければ、あまり問題は無いということだが、事後監視調査の中に、1日2回調査し、結果について公表することを入れて、風力発電設備がバードストライクに影響があるかどうかを明らかにする必要がある。

(委員)バードストライクが起こるのは確実だが、可能性が低いから了解とするのか。バードストライクが発生したときに事業者はどうするのか、そのときに止めるべきなのか。調査は、渡りのときだけか。そのあたりをはっきりさせるべきである。
(委員)風力発電は、日本の環境の中で、エネルギーを得る手段として非常に重要で、今後増えていくと考えられ、今回のようなバードストライク等の問題も考えられる。今回、きちんと調査をし、公開するようなことが確立されることが望ましい。

(委員)調査会については、決定事項について、事業者が対応しないと意味がない。メンバー選定、権限についてどうするのかを今後の問題として残したような書きぶりにして欲しい。



A-4 環境影響評価審査会風力発電所部会議事録 平成20 年8月28 日(木)10:00〜12:00

(委員)前回の部会での疑問点について、回答いただきありがたいと思っている。ただ、十分に回答がなされていない点がいくつかある。1つは、調査会の権限についてである。事業者は、調査会における協議結果を尊重するとあるが、調査会の権限がどこまで含まれるのかが不明なので、もっとはっきりと明記していただきたい。次に調査会のメンバー構成についてである。住民意見書を提出された方は、やはりバードストライクの危険性を心配されているので、ぜひ提出者をメンバーに入れて欲しい。
(委員)調査者の発見率の説明がない。淡路北部地域には、鳥類死骸を持ち去るような大型の哺乳類は、タヌキくらいしかいないと思う。また、バードストライクが発生してから発見までの間隔が空いてしまうと、発生原因が特定しにくくなる。また、種類の判別も難しくなる。その点を考慮すると、バードストライクの発生からなるべく早期に発見する必要がある。
(事業者)…。調査頻度については、限りなく密に行うことが、事実把握をする意味では理想である。また、当たった事実だけでなく、被災した鳥類の種類、原因を明確にするには、バードストライクの発生から経過日数がたたない方が正確にわかることも理解できる。ただ、365 日朝、夕の2回調査をするようにとのことだが、朝から夕方の間に死骸の状況が変化するとは考えにくいので、それはご勘弁していただきたい。バードストライクの発生リスクは、鳥の数が多いほど高いと考え、発生リスクと調査頻度を、タカの渡りのピーク時、渡りの期間、渡りの期間以外の期間の順に考えた。最もバードストライクの発生の可能性が高いタカの渡りピーク時には、毎日調査をして事実把握をきっちりとする。渡りの期間には週2回、渡りの期間以外は週1回行うことを考えている。提示した調査頻度は、バードストライクの発生の有無、被災した鳥の種類、被災原因が把握できる適切な頻度であると考える。調査者の発見率が問題ではないかとのことであるが、調査員はあくまで人間である。調査は、風車周辺を踏査して目視点検する調査になる。見落としもあるかも知れないので、ただ見回すだけでなく、調査は調査目的とやり方、調査要領を熟知した人物に、調査員として調査をするよう考えている。発見率が100%は出来ないが、発見率の高い調査要領を熟知した人物によって調査を行う計画であるので、高い水準を確保できると考える。鳥にとっては、風車配置が直線状に並んでいる場合、避けやすいだろうということは理解できる。しかし、前回の部会で報告させていただいたように、1基だけの場合では、見にくくて当たる場合があるという調査報告もあったが、直線的配置の佐田岬では、きっちり回避している現実がある。また、巾をもって並んでいる場合の例として、洋上風力の調査報告をさせていただいたが、広い巾をもって配置された風車についても、鳥は回避している。配置の巾が狭くても広くても鳥は風車を認識して避けているので、その中間にあたる本事業のような配置でも十分避けてくれるだろうと考える。ただ、本事業はまだ事業実施前であり、可能性について証明のしようがない。だからこそ、リスクに対応した調査を行い、事実把握し、調査会のご意見を踏まえながら、適切な調査頻度を次年度以降へ展開できるよう考えている。一種の実験計画をしようとしている。品質管理の考え方からすれば、平均値も分散も分からない状況で適切な調査計画は立てようがない。よって、バードストライクのリスクが一番高いであろう渡りのピーク時には毎日調査を行い、あってはならないが、どの程度発生するのか、あるいは発生しないのかをきっちり把握した上で、それ以降の調査頻度等について科学的、合理的に考えていきたい。ダミーの風車については、それによる効果があるとの報告があると言われているが、絶対に効果があるということではないので、そこまでの施設対策はご勘弁いただきたい。調査会については、事業者が独善で事業を行っているという誤解を受けないよう開かれた事業としたいので、地域住民の方々と一緒に淡路北部風力を育てていきたい考えから、調査会を設けて取り組んでゆきます。メンバーについては、まだ誰にも依頼をしていない段階であり、先程意見がありましたようなことは考慮し、検討していきたい。調査会の権限を明確にするようにとのことであるが、バードストライクが発生するようであれば、真摯に対応する計画であり、権限について明記しようがないので、ご勘弁願いたい。また、バードストライク調査は、見落としがないように踏査による目視点検を12 基について1回行うのに7、8時間かかる。ある程度、品質管理、抜取検査の考え方で臨まないと対応できない。毎日調査によるお話がありましたが、できる限りそれに近い努力はするつもりですので、先程述べたように、実験計画及び品質管理の考え方に基づいて、考えられるリスクに対する調査頻度の調査を行う計画です。ただ、過去に例のない毎日調査を、学術調査でもされていない調査を求められるのは、勘弁していただきたいというのが正直なところである

(委員)調査会のメンバーの中に地元住民があるが、これはどこまでを指すのか。淡路市外の住民についても、例えば有識者としてメンバーにいれることは可能か。また、調査会の協議結果を尊重するとしていることについて、調査時期、頻度等に問題がありという協議結果が出た場合、それをどこまで尊重するのか。今回は、鳥類という動物についての話であって、品質管理の考え方をそのまま用いるのは適切ではない。どういうことが起こるかがわからないからこそ、供用開始1年目については、毎日調査を行えばわかるのではないかと思い、調査するよう意見を述べた。
(事業者)調査会のメンバーの地元住民は、淡路市と相談している中では、淡路市内在住民のことを指す。有識者の範囲については、また相談させていただきたい。調査会の協議結果をどこまで尊重するかについてであるが、例えば調査頻度を上げるようにとの意見が出れば調査会での結果を踏まえ、弊社で検討させていただきたい。
(委員)私が考えていた意見については、だいたいちゃんと答えられている。住民意見にバードストライクは必ず起こるというものがあった。バードストライクについては、必ず起こるという前提で対策を考えなくてはならない。その対策の1つが調査会であるので、調査会の在り方は非常に重要な問題である。…

(委員)「準備書に記載されている環境保全措置に加え、環境影響評価手続の過程で検討された次の対策等を・・・」とあるが、「次の」とすると、それ以降に出てくる対策は、審査の過程で出てきたもの全てかと読んでしまう。以降の文章には準備書記載の対策は一切出てこないということか。3動物(鳥類)について「バードストライクのおそれを否定することはできないため」とあるが、これに関して、1羽たりとも駄目なのか、それとも起こるかどうかは確率現象というスタンスで臨むのか。文章はこのままでもよいが、審査会のスタンスをはっきりさせておきたい。
(事務局)1羽も起こさせないとなると、事業自体が許されないものとなる
(委員)事業者はゼロとは言っていない。ただ、定量的な予測が難しい。事業者もバードストライクの可能性を否定しているわけではない。
(委員)順応的管理の姿勢で言わせてもらえば、不幸にして落鳥があったときどういう対応を行うのか。風車を停止するよう求めるのか、もう少し調査するよう求めるのか、そしてそういった議論が調査会で行われるのか。このあたり審査会の姿勢としてはどのように望むべきなのか。
(事務局)これまでの事後監視調査とは、あくまでも事業者が自身の領域で調査をして行政に報告するというものであった。今回のように、調査会を設置し、その協議結果を公表し、尊重するという形式のものは新しいものとして評価できるものと考えている。

(委員)対応をする場合の主体はどこなのか。事業者なのか、調査会かそれともその議論も含めて調査会で協議するのか
(委員)稼動停止を求めるとすると、どういう事態になったら稼動を停止するのか、つまり稼動停止を行う基準を調査会で決めてもらわなければならなくなる
(事務局)例えばバードストライクが頻発するような事態になり、一旦稼動停止させて調査の仕方等を再考するように、との調査会の協議結果を出し、これを公表し、事業者が対応することになる。
(委員)事業者は尊重するとのことだが、市とか、地元住民といった他のメンバーは尊重しなくてよいのか
(事務局)市等も調査会のメンバーに入って協議を行うのであり、尊重するということの対象となるのは事業者である。事業を実施するかどうかについては、事業者に権限があり、事業者に協議結果を尊重してもらうことになる
(委員)協議するまでが、あるいは結果の公表までが調査会の権限ということか。
(事務局)協議をして、結論を出すのが調査会の責任であり、その結論を履行するかどうかということは事業者の責任である
(委員)改善命令は出せないのですね
(委員)調査会を設けるのは事業者か
(事務局)調査会は事業者が自ら設立し、身内だけをメンバーとするのではなく、有識者等を入れて運営するものである。県、市が設立するものではない
(委員)事業者が設立した調査会で、稼動を停止するようにという結論は出るのか。
(事務局)そういったものでないと意味がない。
(委員)メンバーの選抜方法が書かれていない。メンバーの選抜で公平さが保たれていたら、稼動停止という結論も出得るだろう。誰がメンバーを選ぶのかが重要である。事業者が選ぶとなると、互助組合的なものになる
(事務局)調査会のメンバー選定については、その公平性が保たれるような書き振りにしたいと考える。
(委員)調査会については、第3者評価を受けるような仕組みにすれば公平性は保たれると思う。事業者が選んだメンバーだと自己評価になってしまう。
(委員)調査会は事業者の自主的なもので、メンバーまでには立ち入れないのではないか
(委員)メンバーの選び方について、もう一言加えるかどうかですね。
(事務局)事業者が自ら設立するので、信頼性、公平性が保てないのではないかといことではなくて、調査会の位置付けとかそれに対する考え方をしっかり決めておけば、取締役会と監査組織のような関係が構築できるのではないかと考える。
(委員)6その他の(1)〜(4)は総論的なことが記載されているが、(5)については、個別の項目についての記載になっている。5景観の後に移してはどうか。答申素案について、意見のあった点を修正し、次回の部会で答申案を取りまとめることとなった。
以上


A-5 環境影響評価審査会風力発電所部会議事録 平成20 年9月19 日(金)14:00〜17:00

8 議事概要

(委員)第3パラグラフの「バードストライクのおそれに対して、次のような対策」の「次の」は、(1)、(2)、(3)のことを指しているのか。下の文章の「また、信頼性の確保から・・・」のことを指しているとの誤解を招くので、「下記の」に訂正してはどうか。
(事務局)指摘を踏まえ、文言を修正する。
(委員)ヒヨドリは多い場合には数千羽の群れで渡るケースがある。また、飛翔高度もちょうど風車の高さである。(3)「施設供用後には、タカの渡りに関する情報網から」とあるが、この書き振りではタカに限られることになるので、渡りを行うヒヨドリについても考慮するべきである。タカ等にしてはどうか。
(事務局)「施設供用後には、タカ等の渡りに関する情報網から」と修正する。
(委員)第1パラグラフには「タカ類」と記載されているが、これでよいのか。
(委員)タカ類とするとタカの仲間だけに限られる。タカ等と修正してはどうか。
(委員)第1パラグラフの「タカ類」については、事業者が、準備書に記載している内容について記載している箇所であるので、「タカ類」のままでよいと考える。
(委員)他にも第2パラグラフの「タカの渡り」や(1)の「タカの渡り」と書かれている箇所がある。タカ類なのか、タカ等なのか、鳥類とするべきなのか、使い分けがよくわからない。また、第1パラグラフの「タカ類」については、現状のままでよいとして、第2パラグラフの「タカ」という記載は変更するべきか。
(事務局)渡りのルートでのバードストライクの状況に関して提出された資料では、「タカ」又は「タカ類」となっているが、第2パラグラフの「タカ」は、第1パラグラフに合わせ「タカ類」と修正することで良いか。
(委員)他の鳥も含めた方が観察しやすいと思う。種類を特定することの方が逆に難しい。よって(1)、(2)、(3)については「タカ」に限定しない方がよいと思う。
(委員)タカだけでなく他の鳥類のバードストライクも考えられるので、他の鳥類についても含んだ記載にするべきである。
(委員)「タカ」の後に説明書きを入れてはどうか。
(委員)渡り鳥の種類はどのくらいあるのか。
(委員)留鳥と呼ばれる鳥もその一部が季節移動をすることがわかっているので、はっきり何種とは言えない。
(委員)渡りとは一体何なのかということになる。
(委員)バードストライクの発生の有無についての調査の対象は、事業者はタカ類のみか、それとも他の鳥類も含んでいるのか。
(委員)バードストライクの発生の有無を調べるという前提であるので、タカ以外も含んでいると考えている。
(委員)鳥類の渡りについては、少し曖昧なところがあり、全ての鳥は移動や分散を行い、季節的にそういう移動がなされると渡りと言われている。私が事業者に求めた365 日のバードストライク調査は、明らかな渡りのシーズン以外にも鳥が動くのは確かなことであるので、その影響の大きさが不明なことから提案したものである。(1)、(2)、(3)に記載されている対策に関して、タカ以外の鳥類についてそれほど深く議論していないが、希少性があるということでタカがクローズアップされているだけで、渡りについては当然他の鳥も行うものである。全ての渡りや移動について、こういった対策を実施するべきである。例えばヒヨドリが100 羽、200 羽死ぬという事態になれば、それは問題である。主となるのはタカであるとしても、全ての鳥類が含まれるような文章にしていただきたい。タカにだけ対策を実施すればよいとするのは適切ではない。
(委員)対象をタカ類とするのか、それとも全ての鳥類とするのかということも含めて調査会で議論するということか。
(委員)調査会で議論するのではなく、対策の対象をタカだけでなく他の鳥類も含むように答申の中で明記した方がよい。
(事務局)例えば(3)については、「施設供用後には、タカ等の渡りに関する情報網から渡りに関する情報」と修正することで良いか。
(委員)タカ類、具体的にはサシバだが、春期と秋期の渡りでは向きが逆である。また、春期の渡りはバラバラなので、これを把握するのは大変なことである。せっかく調査会を作るのだから、現地の様子を踏まえ、調査会で決めればよいと思う。データがない状態で、今この場で議論しても仕方がないのではないか。(3)の内容は調査会で協議することにしてはどうか。つまり(3)自体が不要ではないか。
(委員)先程の議論では、(1)、(2)、(3)の対策について、対象をタカだけにするのではなく、他の鳥類についても含むように答申の中で「タカ等」と記載する方向になったが、(3)が不要となると(1)、(2)も消去することになってしまう。
(委員)「供用当初においては、渡りのピーク時には風力発電設備を停止して回避行動を確認し」とあるが、風車を停止してどのようにして回避行動を確認するのか。また、具体的に渡りのピークとはいつなのか。「渡りのピーク時には風力発電設備を停止して回避行動を確認し」との記載に関して、回避行動とは一体どういうものなのか。風車が動いてないときに回避した場合、「その結果を踏まえて、その後の対策を行う」とあるが、あまり意味がないのではないか。
(事務局)構造物が出来上がっている状態なので、全くない状態と比較はできるのではないか。渡りのピークについては、事業者見解では、タカの渡りのネットワークの情報をもとに推定するとしている。
(委員)設備を停止することは、事業を行う上で非常につらいことである。サシバ等の渡りに関して、ピーク時がいつかはっきりしないのに、また、回避行動がどういうものかが明確でないのに、その間、設備を停止させるのはいかがなものか。
(委員)(3)について、供用当初に限らず、バードストライクによる影響が大きいと判断されれば稼働の停止も行う内容にしてはどうか。
(委員)停止するかしないかの判断は調査会で議論するべきである。それでないと調査会の意味がない。
(委員)(1)、(2)、(3)には基本的な考え方を記載するのが良いと思う。調査会では、それ以外の詳細な事項について、より具体的に議論されるものと考える。バードストライクの調査頻度については答申に明記するべきでしょうか。
(事務局)バードストライクの調査頻度については、事業者の見解書に記載されているが、答申に頻度を明記すると、調査結果や調査会の意見を反映しにくいのではないか。
(委員)停止しているときに回避しているかどうかの議論が出ていたが、停止しているときブレード面を通過すると、それは回避していないことになるのか。そういったケースは多くなると思う。稼働させながら確認してはどうか。
(委員)稼働させながら調査をするのは適切ではないのではないか。1年目は停止した状態で調査し、2年目以降に稼働させた状態で調査すればよいのでないか。
(委員)渡りのピーク時において風車を停止し、回避行動が確認された場合でも稼動させないのか。ピーク時であっても、回避行動が確認されれば停止する必要はないのではないか。
(事務局)事業者見解では、施設供用後の予防策として、1年目の渡りのピーク日の日中は風力発電設備を停止し、回避行動を確認しながら慎重に順次運転を開始するとしている。ピーク時以外での停止していない状況での回避行動も含めて、調査会において総合的に検討することが可能ではないか。
(委員)第3パラグラフに、「予防的見地から、バードストライクのおそれに対して、次のような対策や調査を行う必要がある。」との記載がある。ここでの予防的見地とは、一旦風車を停止して危険を回避し、少しずつ順応的に稼動を行っていくという意味ではないか。
(委員)「渡りのピーク時には風力発電設備を停止して回避行動を確認し、この結果を踏まえて、その後の渡りのピーク時における稼働又は対策を行うこと。」とあるが、影響が大きければ対策を行うという理解でよいか。対策というのは停止を含んでいるのか。私はバードストライクが起こるだろうと考えている。今の文言だと悪い影響が出たとしても停止せずに稼働を行うかのように読める。また、供用当初だけでなく、渡りの時期についてはずっと停止することが望ましいと考える。
(委員)対策とは停止しかないのではないか。
(事務局)「稼働の可否も含めて対策を行うこと。」と修正することで良いか。
(委員)「また、信頼性の観点から」とあるが、何についての信頼性確保なのかがわからないので誤解を招く可能性がある。今は信頼性がないということなのか。別の言葉があるのではないか。
(事務局)「また、対策等の実効性確保の観点から」と修正することで良いか。また、先程の回避行動の確認等については、「供用当初においては、渡りのピーク時には風力発電設備を停止するとともに、回避行動を確認しつつ」と修正することで良いか。
(答申案について了承された。)
以上


A-6 淡路北部風力発電事業(仮称)に係る環境影響評価準備書の審査について < 答 申 >平成20年9月26日
環境影響評価審査会 平成20 年9月26 日
兵庫県知事 井戸 敏三 様
環境影響評価審査会
会長 山口 克人
淡路北部風力発電事業(仮称)に係る環境影響評価準備書の審査について(答申)平成20 年5月9日付け諮問第11 号で諮問のあった標記のことについて、下記のとおり答申します。



標記の環境影響評価準備書(以下「準備書」という。)について、環境の保全と創造の見地から審査を行った。
風力発電は、自然エネルギーの一つであり、兵庫県においても、「新兵庫県地球温暖化防止推進計画」により、積極的な導入に取組まれているところであるが、風力発電設備の建設に際しては、関係する様々な主体の理解と協力のもと、土地改変や稼動に伴う地域の環境や生物への影響を最小限に抑えつつ、適切に推進されることが必要である。
このため、当審査会で慎重に審査したところ、準備書に記載されている環境保全措置に加え、環境影響評価手続の過程で検討された事項に留意し、次の対策等を積極的かつ着実に実施することにより、本事業の環境影響評価については、妥当なものとなると考える。

1 騒音

風力発電設備の設置場所を住居地及び宿泊施設から250m以遠に設置することとし、全ての予測地点及び時間区分において、総合騒音レベルは環境基準値以下となっていることから、周辺の生活環境が損なわれるおそれはないとしている。しかしながら、この予測結果は、風力発電設備の運転が特定の定常状態のとき、一定の条件に基づく予測式で得られたものである。したがって、予測の不確実性が存在することから、「環境の保全と創造に関する条例」に基づく規制基準の遵守はもとより、強風時も含め、施設供用後に住居地等において調査を実施し、必要に応じて対策を講じ、周辺への騒音の影響をできる限り低減するとともに、住民からの苦情等が発生した場合には、適切に対応する必要がある。

2 低周波音
全ての地点において、環境省作成の「低周波音問題対応の手引書」に示されている「心身に係る苦情に関する参照値」を下回るとしているが、同値は、苦情の申立が発生した際に、低周波音によるものかを判断する目安として示されたものであり、低周波音の影響には個人差があることも考慮し、施設供用後において、住民からの苦情等が発生した場合には、速やかに適切な対策を講ずる必要がある

3 動物(鳥類)
本事業実施区域及びその周辺は、タカ類の渡りの主要なコースとなっているが、秋季は本事業実施区域の上空付近を風力発電設備のブレード回転面よりも高い高度で通過する傾向がみられたこと、春季は本事業実施区域外(主に東側の海岸寄り)を通過する傾向がみられたことから、バードストライクの可能性は低いとしている。サシバ及びハヤブサの営巣地も確認されたが、いずれも本事業実施区域外であること及び直接土地改変されないことから、営巣地への影響は小さいとしている。また、国内各地の風力発電設備において、いくつかのバードストライクの事例はあるものの、タカ類の渡りのルートを含め、バードストライクが著しく発生しているという情報は得られていない。しかしながら、バードストライク発生状況の調査方法が確立されておらず、その把握が十分でないことも考えられ、また、風力発電設備設置場所の地形などの状況も異なることから、本事業に伴うバードストライクがどの程度発生するかを定量的に予測することは難しいため、予防的見地から、バードストライクのおそれに対して、下記の対策や調査を行う必要がある。また、対策等の実効性確保の観点から、調査方法、調査結果の評価、対策について協議するため、事業者、関係市、地域住民、有識者で構成される組織を設け、その協議結果を公表するとともに、対策や調査の実施に反映させる必要がある。なお、調査の実施に際しては、地域の有識者、風力発電設備周辺の土地所有者、周辺住民等の協力を得、幅広く情報を収集することが望ましい。

(1)風力発電設備の工事の実施に当たっては、渡りのピーク時を避けるなどタカ等の渡りへの影響を考慮して組立工事を実施するとともに、営巣しているサシバやハヤブサの行動圏において、抱卵・育雛の妨げとなるような工事(重機の使用等)を行なわないよう配慮すること。
(2)風力発電設備の試運転については、タカ等の渡りのピーク時での実施を避けるとともに、営巣しているサシバ等の抱卵・育雛に影響がないように配慮すること。また、供用開始までの期間において、風力発電設備に対する鳥類の回避行動についての調査を行うこと。
(3)施設供用後には、タカ等の渡りに関する情報網から渡りに関する情報を収集し、供用当初においては、渡りのピーク時には風力発電設備を停止するとともに、回避行動を確認しつつ、この結果を踏まえて、その後の渡りのピーク時における稼動の可否も含めて対策を行うこと。また、バードストライクの発生の有無について、調査を適切に行うこと。

4 動物(鳥類以外)及び植物
動物(鳥類以外)については、工事終了後は裸地の植栽等による緑地修復に努め、ため池については改変せず、土地改変を行う際には土砂流出防止措置を確実に実施する計画であることから、生息環境への影響は小さいとしている。また、植物については、土地改変区域において確認された種が、周辺区域にも多数生育することから、土地改変による植物相の変化は小さいとしている。しかしながら、新たな貴重種が確認された時点での適切な保全対策が望まれるため、動物(鳥類以外)及び土地改変区域内の植物相の調査を事業実施前に実施するとともに、貴重種が確認された場合には、事業実施前に専門家の指導及び助言を受け、適切な措置を講じる必要がある。また、改変区域内において植栽を行うに当たっては、改変前に生育していた種又は淡路北部地域の風土に根ざした種を可能な限り用いる必要がある。

5 景観

景観への影響を最小限にとどめるために、主要な眺望地点であるあわじ花さじきから北東方向(明石海峡大橋を含む)の眺望の障害となるおそれがある範囲には風力発電設備は設置しない等、既存の眺望及び周辺の風致・景観に調和するよう配慮しているとしているが、大規模な風力発電設備が出現することから、景観阻害を生じさせるおそれもあるため、事業の実施に当たっては、事前に地元住民に十分説明を行うとともに、周辺環境との調和に十分配慮する必要がある。

6 電波障害
風力発電設備の設置に伴うテレビジョン電波受信状況への影響については、アナログ放送で大阪局について遮へい障害が、大阪局及び徳島局について反射障害が発生する可能性があるとしているため、施設供用後において、何らかの障害が発生した場合には、速やかに適切な対策を講ずる必要がある。

7 その他
上記の項目の対策等に加え、事業の実施に当たっては、次の点に留意する必要がある。
(1)事業の実施については、事前に地元住民に十分説明を行うとともに、住民からの要望・苦情等に適切に対応すること。
(2)周辺環境の変化等により環境影響評価の予測の前提条件となる事項に大きな変化が生じた場合や、現時点で予測し得なかった影響が生じた場合は、状況に応じた適切な環境配慮を行うこと。
(3)「環境影響評価に関する条例」に基づく事後監視調査については、関係機関と協議を行い適切に実施するとともに、その結果については定期的に公表すること。
(4)環境への影響やその対策について、今後とも情報収集を行うとともに、環境影響の低減のため、専門家の指導及び助言を受け、実行可能なより良い技術の導入に努めること。

3 環境影響評価審査会 委員(五十音順)
○朝日 稔
遠藤 知二
○大迫 義人
小谷 通泰
川井 浩史
○北村 泰寿(風力発電所部会長)
○澤木 昌典
菅原 正孝
○田中 眞吾
田中 哲夫
田中 みさ子
○辻 治雄
中瀬 勲
中辻 啓二
中野 加都子
錦織 千佳子
西村 多嘉子
○服部 保
別府 庸子
槇村 久子
山口 克人(会長)
山下 淳
山中 芳夫(副会長)
○印は、風力発電所部会委員



 「当審査会で慎重に審査したところ、準備書に記載されている環境保全措置に加え、環境影響評価手続の過程で検討された事項に留意し、次の対策等を積極的かつ着実に実施することにより、本事業の環境影響評価については、妥当なものとなると考える。」と、相成った。そして、関電は

@-1兵庫県淡路市における風力発電事業について平成21年(2009)/1/30,@-2兵庫県淡路市における風力発電事業について平成21年(2009)/1/30


当社グループでは、平成14年6月から風力発電の開発に向けた風況観測や事業性の検討を含む調査を進めてきています。このうち、兵庫県淡路市北部については、平成15年1月に調査を開始し、事業性が見込まれたことから、平成18年2月から環境影響評価を実施してきましたが、このたび、兵庫県の「環境影響評価に関する条例」(※1)に基づき、環境影響評価書を兵庫県に提出しました。これを踏まえ、正式に本事業に着手することとしたものです。

今後、本年6月に建設を開始し、平成22年12月に運転を開始する予定です。

としたのだが、
その後