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健康
           
藤田保健衛生大学市民公開講座(平成19年2月11日脱稿)

   ゴルフとテニス仲間のトヨタ先輩に誘われて、藤田保健衛生大学(愛知県豊明市)の第12回市民公開講座に平成19年2月10日、初めて参加した。

   藤田保健衛生大学に出かけたのは初めてだが、カーナビで簡単に辿り着けた。自宅から僅か15Km地点にあったが、ゴミ屋敷みたいな名大医学部とは格違いの、壮大な建物群に出会って些か驚いた。

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はじめに

   今回のテーマは『暮らしと健康』シリーズの“排尿の悩み”である。次回は5月頃に“目”を取り上げるそうだ。

   講演では老人特有の症状の解説に重点が置かれた。総花的な解説だったが大部分は『家庭の医学書』と重複するため詳細を此処に記すのは割愛し、私が興味を感じたトピックスについてのみ報告することにした。
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藤田保健衛生大学

   当大学医学部は昭和47年に開校され、付属病院は翌年の昭和48年に開設。我が国の大学病院は通常1,000ベッド前後だが、当大学付属病院はベッド数が1,505もある超大型。最新の医療設備の導入に力を注ぎ、今や地域の中核医療機関にまで育ち、病院の正面玄関前にはバス停すらもあった。

   教授陣には慶応卒が多く、王監督の胃がんの全摘手術を担当した慶大教授も当大学で腕を磨き慶応に戻ったのだそうだ。とは言え、新設医大の宿命か優秀な学生は集まらないらしく、医学部の合格難易度ランキングでは今尚底辺から抜け出せないらしいし、入学一時金(千数百万円?)が高いのでも有名だ。
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市民公開講座

   過去11回の市民公開講座は参加者数が確定するたびに手ごろな大きさの会場を選定し、申込者にそのつど連絡していたが、徐々に参加者が増えてきたので、今回以降は常にフジタホール2000にするそうだ。今回の参加者は340人だが、ホールの定員は2,000人なので参加予約は取らず、今後は自由参加にするそうだ。

   フジタホールは、日本では私は未だ見かけたことがない構造になっていた。1階は前後に長い緩やかなスロープが付いたフロアで概算1,500席。2,3階は舞台を望むような馬蹄形をした椅子席。西欧のオペラ劇場を前後に長くし上下は低くしたような構造だった。壁面や天井は金箔で覆い尽くしたかのような絢爛豪華さを装った異常な装飾。主催者はこのホールが満員になるような市民講座にしたいと挨拶。

   受講者のために駐車場ビルを無料で解放。市民講座の聴講料も無料。昨年受講した名古屋大学の市民講座は聴講料も駐車場も有料だったのに比べれば、私大のサービスのよさは長期戦略か? 
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講演

   聴講者には、講師の略歴や簡単な講演要旨とスライドのコピーが印刷されたテキストが会場の受付で配布された。スライドのコピーはA4の1ページに6枚も縮小して転載してあり、小さな文字は殆ど読めず、役に立たなかった。

■排尿のしくみ

   講師。白木良一氏。1984年慶応大医卒・助教授・医学博士

@ 排尿

   膀胱は平滑筋なので自らの意思で伸縮させることは出来ない。蓄尿が進むと尿意が発生し、大脳の指令で膀胱の収縮と尿道括約筋の弛緩の連動運動が発生して排尿される。膀胱が空になると収縮が止まると同時に尿道も締まり、蓄尿が再開される。

   この蓄尿と排尿の連動機能に異常が発生すると、頻尿や尿失禁が発生する。

A 排尿日誌

   排尿に異常を感じたら、排尿時刻・排尿量・コメント(尿失禁の有無など)を記録した排尿日誌を三日間で充分だから付けた後で受診することが望まれる。排尿量は計量カップを使いペットボトルの外側にラインを引いた程度の計器で計れば充分だ。

   患者が『おしっこが良く出る』と発言しても、尿量が多いのか、排尿間隔が短いのか、突然尿意を感じる現象なのか、そのデータがないと医師と患者の情報交換は難しい。

■排尿機能検査

   講師。長嶌(ながしま)和子氏。1992年藤田保健衛生大学短大卒・排尿機能検査技師

@ 排尿機能検査

   尿流測定⇒排尿量(cc)/排尿時間(秒)が5以下になれば異常。

   残尿測定⇒仰向けに寝転んで、下腹部にゼリーを塗り、超音波装置で膀胱の大きさを調べる。膀胱の縦・横・深さの最大値の積の半分が残尿量の概算値。

   膀胱内圧測定⇒尿道からカテーテルを挿入し、空気か炭酸ガスまたは生理食塩水を注入しながら蓄尿時の膀胱圧力変化を測定する。尿意を感じる初発尿意容量と最大尿意容量を測定。排尿しながら(空気や炭酸ガスの場合は屁のような現象)膀胱の圧力変化も測定する。

   正常な場合は蓄尿中の膀胱内圧は大変低いが、最大容量に達すると排尿の意志と共に膀胱の筋肉が強力に収縮して膀胱の内圧が高まり、排尿を開始する。

   間質性膀胱炎では蓄尿中にもかかわらず、膀胱内圧はどんどん高まる。

■前立腺の病気と男性の排尿障害

   講師。早川邦弘氏。1985年慶応大医学部卒・助教授

@ 排尿障害

   加齢に伴い男性は尿勢低下・尿意切迫感・残尿感が自覚されるようになる。主な原因には前立腺肥大症と前立腺がんがある。これらの排尿障害は徐々に発生するため、異常に気付くのが遅れがちであるが、決して放置すべきものではない。

   軽度の排尿障害は薬物療法でも充分に効果がある。膀胱頸部や前立腺の平滑筋を弛緩させて尿道抵抗を低下させ排尿障害を改善させる『α遮断薬』の投入が標準的治療法だ。

A 高齢者の夜間頻尿

   尿は一日中同じ速度で発生しているのではない。夜間は『抗利尿ホルモン』の働きで尿の発生が抑えられている。加齢と共にこのホルモンの分泌が減少するが、『抗男性ホルモン薬』で対処できる。

   高齢者は睡眠が浅く目が覚めやすく、尿意の発生で目覚めたと勘違いしている場合がある。このように人には睡眠薬が効く。

B 前立腺がん

   PSA(ng/mL)の数値の2倍の数値ががんである確率に近い。PSAが20ならばがんの確率は40%となる。50以上になるとがんの罹患確率は90%以上だ。

   初期がんならば小線源療法も有益だ。この療法を受けた後では手術治療法は困難とテキストには記載されていたが、手術が困難になる理由は書かれていない。

■女性と子供の尿漏れ

   講師。佐々木ひと美氏。1993年藤田保健衛生大学医学部卒・講師

@ 腹圧性尿失禁

   出産や加齢により膀胱や尿道を支える骨盤底筋群の脆弱化によりくしゃみや重いものを持った時に失禁する症状。50歳代が発症のピーク。薬物療法や手術など治療法はあるそうだ。

A 切迫性尿失禁

   頻尿や尿意切迫によりトイレに辿り着く前に失禁する症状。膀胱の過敏症が主たる原因だが薬物療法がある。

B 小学生以上の夜尿症

   原因はヒポクラテス時代から今に至るまでわからないし、決め手となる治療法もないが、成人すると殆どは治る。

   小学校高学年になって、林間学校・合宿・修学旅行直前に病院に駆け込んでも、対策はない。せいぜい、起こさず、焦らず、叱らず・・・
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質疑

   事前に配られていた質問用紙を講演の間の休憩時間に回収。4人の講演後、演壇に講師が並び傍らの司会者(副院長)が質問を層別して次から次に質問の要旨を述べて、講演者に回答させた。質疑の予定時間は35分。

   会場の参加者の殆どは年配者。質問は多岐に亘ったが、多かったのは前立腺肥大症と前立腺がんに関するものだった。現在の症状と治療の的確性に関する確認事項が多かった。我が質問は取り上げてくれなかったので、終了間際に挙手して質問。

@ 尿線分裂の原因は何でしょうか?

   水道に繋いだホースの先端を押さえると水流が分裂するのと同じです。尿速が遅くなったのが原因です。

   石松注。粘性流体力学の原理を理解していない白木助教授の回答は間違っている。ホースの先端を押さえるとナビア・ストークスの方程式を持ち出すまでも無く、流速は速くなることは明白。尿速を遅くすれば尿線分裂が消滅することはしばしば体験している。

   私は尿速が主原因ではなく、膀胱から前立腺までは層流だった尿流が、肥大した前立腺に挟まれてオリフィス化した尿道を通過する際に乱流化した結果だと推定しているのだが・・・。

A 陽子線照射による前立腺がんの治療効果はどの程度でしょうか。静岡県がんセンターの同設備の対象患者の半分は前立腺がん患者と日経で報道されていましたが・・・。

   陽子線照射は放射線照射の一種です。患部以外の健常な部位にも照射されるという欠点があります。今後、10〜15年の実績を見届けないと効果の評価はできません。

   石松注。白木助教授の物理学の知識欠如にはがっかりした。放射線は電磁波、陽子線は電磁波ではなく粒子線の一種。電磁波はホイヘンスの原理で拡散するが粒子線は拡散せずピンポイントで患部に照射できることに特徴があり、放射線よりも格段に治療効果が高いことは既に多くの実績で確認されているからである。

   唯一の欠点は装置が高く(80億円前後。低価格化が課題)日本には未だ数箇所しか導入されていないことと、保険が適用されないために自己負担金が288.3万円かかることにある。

   私は食道がんの治療で既に放射線は被爆許容限界値まで受けているので、食道がんの再発や一番怖れている肺がんへの転移が確認されれば間髪を入れず、主治医(愛知県がんセンター副院長)の提案通り陽子線照射治療を受ける覚悟である。 
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おわりに

   今や、愛知県下でも各大学は国公私立を問わず公開講座を競うが如く開設している。今尚向学心旺盛なトヨタ先輩から、あちこちの公開講座の受講のお誘いをしばしば頂き感謝している。名大に引き続いて今回は2回目の参加だったが、今後も関心の高い内容であれば受講し続けたい。

   しかし、トヨタ自動車が著名人を招聘して開催していた各種講演会を初め、この種の公開講座を受講しても満足度が下がるのは何故だろうか。老化現象だろうか・・・。
 
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読後感

ご無沙汰しています。

この位の量のレポートですと一気に読めてしまいます。

小生もここ数年頻尿になってきていると自覚しておりましたので、豊田市内の自宅を改築した時にはトイレをベーッドルームの近くにして貰いました。ホテルのような作りが良かったのですが共用ではそうも行かず。タイの住宅は個室トイレのスタイルで建てられているので助かっています。

講義に対しては、相変わらず鋭い指摘ですね。小生は物理の法則は卒業と共に忘れてしまいました。結構有名な大学病院になっている藤田学園でも教師陣のレベルは?

早朝のトイレ起床は老化現象と単純に考えていましたが、検査して貰った方が良いかもしれませんね。データを取っていかないと判らないというのは納得です。

なんとなく頻尿と自覚しているので、ツアーの時には早めにトイレに行き、トイレ時間まで長そうな時にはビールを我慢して対処中ですが。

タイの大病院は何処も日本語の通訳がいるそうですので一度トライしてみます。

@ トヨタ後輩・工・独力で再就職先を見つけ、タイで自宅を購入。単身赴任しながら活躍中
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今晩は。忘れた頃のメールで申し訳ない。

【暮らしと健康】シリーズの“排尿の悩み”の記事を大変興味深く読ませて戴きました。先日、私の病気の件でご心配をお掛けしましたが、幸いに経過も良く一安心の状態です。

とは言え、血圧のコントロールが出来にくくなった原因を私なりに納得したくて、入院中に種々の検査を希望し、そして受けましたがその結果、「前立腺がん」のPSA値が高く【生検】を受けて現在はその結果待ちです。

頻尿等の事も年齢相応と思っていましたが、この点でも今回の記事は良い勉強をさせて戴いたと感謝致します。

ついでながら、今回私の入院した病院は「北里研究所病院」で慶応病院とのつながりが強いようです。更に内科での担当の医者は小倉高校(注。北九州市では我が母校東筑の文武に亘るライバル)の卒業生でした。では、おやすみなさい。

A 高校同期・東京東筑会の幹事として永年にわたり活躍中・同期会で毎年お会いできる方