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随想
           
職場の月間新聞(平成5年脱稿)

   職場で発行されていた小さな月間新聞の編集委員からコラム欄の執筆を頼まれた。

   読者に関心のある国々と、トヨタ自動車との関わりも添えて国ごとに短く纏めた。
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ベトナムは今

      ベトナムに今世界の熱い視線が集中。ベトナム戦争終結後はや15年。南部の中心ホーチミン市にはアジアの典型的な、活気・喧騒が既に復活。 

      ▼ベトナム人は人相・性格が日本人と瓜二つ。米・醤油・うどん・インスタントラーメン・お茶・お箸・仏教・神棚・盆栽・活け花にどっぷりの生活だけではない。日本人が失いかけている刻苦勉励にひたむきな態度を今尚キープ。 

      ▼ベトナム人は私同様ブランド品が大好き。たばこは何故かスリーファイブ(555)、オートバイは本田、車は当然トヨタ。当社への官民挙げての期待は眩しいほど。                                                    
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シンガポールは免税天国

   ブランド品の免税天国。例えば有名店でのクロコダイルの絶品在庫は『名古屋三越』の何と百倍。

   ▼グルメ天国。移民族の食文化が競演。羊のイスラーム・豚の中華・カレーのインド・牛の西欧に、今や活魚の日本も一目の存在。

   ▼インフラ天国。73階建ての高層ホテルを初め、世界に冠たる空港・コンテナ港・地下鉄・国際鉄道・高速道路もあって全土が公園風。ゴミ・渋滞・スラム・汲み取りは全てゼロ。

     ▼企画中の、アジア・ラボにシンガ(獅子)プラ(都)の守護神マーライオンの御加護あれ!  
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インダス文明のルーツ、パキスタン

   パキスタン人の造型美術能力に驚嘆。世界第二の高峰K2(8,611m、ゴドウィンオースチン)を戴くカラコルム山脈を背景としたインダス河の渓谷美が才能を触発? 

   ▼モヘンジョダロ(死者の丘の意)で発掘された小さな神官の胸像(注。愛知万博ではその複製品が展示された)は万人にほのぼのした共感を誘発。

   ▼仏教の普及に仏像を導入したのはパキスタン人。ガンダーラの『断食する僧侶』(注。愛知万博ではその複製品が展示された)を拝観すれば、いかな無神論者もいたく感動。

   ▼ムガール帝国のモスクの美しさは圧巻。ネギ坊主型のドームが天空に輝くモスクを眺めると天国もかくやと連想。

   ▼我がインダス・モータース社から、21世紀を先導するカーデザインの潮流が始まらんことを信じたい。                                  
    
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文明の胎盤、アナトリア(トルコ)

   当地ほどに多様な文明が連綿として孵化した地域はない。トロイ(都市文明)、ヒッタイト(鉄)、リディア(貨幣)、ペルシア(オリエント文明)、イオニヤ(哲学)、東ローマ(キリスト教)、セルジュク・オスマン(イスラーム)。

   ▼繁栄の痕跡は全国に点在する神殿・劇場・水道橋・教会・モスク・宮殿・博物館に見られるだけではない。諸民族との八千年に達する興亡史の中で育まれた国際感覚・折衝力・文化吸収力にも濃縮されている。

   ▼臨月には、ブルーモスクに位負けしないカローラを、彼等ならトヨタサ(トヨタ自動車・三井物産と現地財閥サバンジとの合弁会社)でラインオフさせるのは火を見るよりも明らか。      
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したたかでしなやかなタイ

   建国以来、千年を越える独立を維持したタイ民族は、異文化の吸収同化力も抜群。中印伝来の宗教・文字・料理からは、タイ式仏教システム・美しいタイ文字・香辛料を活かしたタイ料理を考案。華僑すらも国籍法の下で自然に吸収。

   ▼工業化へのアプローチも現実的。壮大な製鉄所の建設といった夢は求めず、巧みな外資政策の下に労働力を活用した軽工業から着手。いつのまにかアセアン一の大工業国へ到達。 

   ▼インフラへの巨大投資。国の中核、自動車産業の急発進にも王手。技術移転への受入れ態勢も着々。アジア・ラボの活躍・貢献は火を見るよりも明らか。                                                          
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日本とは対照的なマレーシア

   マレーシアはアジアの新興工業国で人口密度は最小。そのため豊富な資源(錫・石油・ガス・ゴム・木材)開発にインド人や中国人が固有の文化と共に移住してできた複合多民族国家。

   ▼クアラルンプールには同じ形の高層ビル・ホテル・モスクは二つとない。多彩な伸び伸びとした造型美と緑したたる熱帯樹を組み合わせた街並は、東京都の美観論争を一笑するほどに対照的。

   ▼旧宗主国よりも日本に目を向け(ルック・イースト)、マレー人と他民族とのバランスを調和させながら、ひたすら工業化を目指す熱意へ、現地に喜ばれるアセアン技術センターで微力ながらも応えたい。                                                    
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21世紀の大国、インドネシア

   ピテカントロプスで知られるインドネシアは、三百民族・二百五十言語から、一民族・一言語を目指す一万三千島もある南洋の大国。多数派ジャワ民族の伝統よりも、国全体の調和と協調を優先させて、多様性の中の統一へとひたむきに歩む。

   ▼国語にはマレー語を改造したインドネシア語を憲法で規定。標記法にはマレーシア式を採用。国章にはインド神話の霊鳥ガルーダを選定。信教は自由。ボロブドールの大遺跡を残した仏教や、プランバナン遺跡を残しバリ島で栄えるヒンズー教も、イスラームと共存。

   ▼日本との交流も長くかつ深い。古くはペルー伝来のジャガイモを伝え、近くは日本の技術・資本を受入れて高度成長期に突入。名実共にアセアンの中核となる日も近い。アジア・ラボへの大きな期待に微力ながらも応えたい。                     
    
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何故か支援したくなるポルトガル

   極東の日本に西欧文明を最初に紹介した極西の国ポルトガルは、フェニキア・カルタゴの血も引く海外指向国家。バルトロメウ(希望峰)、ヴァスコ(インド航路)、カブラル(ブラジル)、マゼラン(世界周航)の活躍もめざましく、とうとう種子島に漂着し、日本史を急加速。

   ▼ピンからキリまで・襦袢・ザボン・カステラ・メリヤス等の外来語や、漢字に苦労して考案した振り仮名にも、その痕跡を残す。

   ▼陽気で情熱的なスペイン人とは対照的に、温和で感傷的なポルトガル人は悲恋・別離等をテーマにした歌『ファド』が大好き。日本の演歌に似ているのは何故なのだろうか?
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