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随想
           
死ぬ準備(平成14年5月31日脱稿)
 
    姪の結婚式に参列のため帰省した(5/1〜7)折りに、福岡市に住んでいる友人達と3人で10年ぶりに恩師(私に友人の娘と見合いさせ、仲人も引き受けて頂いた大先生。勲二等)ご夫妻をお尋ねし、叙勲のお祝いを述べた後、3時間もお喋りした折りの話題です。
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恩師の近況

『先生、最近は何をされていますか?』
『一度に歩ける距離が200〜300mになったので、 死ぬ準備をしている』
『えっ!。どんな準備ですか?』
『死んだときに必要になる連絡先だよ。序でに、年賀状の整理も始めた。今年までは年賀状は500枚出していたけれど、来年からは印刷した年賀状しかくれない人には欠礼することにした』と、言われながらも『値上がりする前に、先月パソコンを買った』。

大きな書斎にはパソコンが3台も並び、口とは裏腹にお元気だったので、一安心。
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住職の願い

    この話を小中高時代の同期生で元小学校教諭、現在は住職をしている友人に話したら、彼は200戸の檀家の皆さんに、いつも3つの準備を薦めているそうだ。

@死亡連絡先リストの作成

 本人の交友関係には遺族すら知らない人もおり、特に突然死の場合には困るから。

A葬式用の写真の準備

     住職としては、祭壇に飾られたピンぼけ写真を見るのは、悲しくなる。カメラが普及した結果、写真スタジオで記念写真を撮る人が少なく、アルバムから選んだ写真を拡大しただけのものが多く寂しい。

      日頃から葬式用に自分が一番気に入った写真を用意しておき、5年も過ぎたら長生きできたことに感謝して、実年齢に近い新しい写真と取り替えておいて欲しい。

B資産リストの作成

       固定資産は遺族も知っているけれども、金融資産や保険関係は意外と盲点になっていて、遺族が困る。
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死に顔作り

    この話を68歳になるゴルフ仲間の一人に紹介したら『92歳になる老人病院の院長が、死に顔づくりのお勧めをテレビで話したのを、見たことがある。“最後のお別れの時に、参列者がほっとするような良い顔で大往生するためには、嘘でも良いから日頃から笑顔づくりに励んで下さい”』

    懇意にしている豊田市の老住職の述懐を思い出した。『長いこと葬式にかり出されたが、この仏様の一生は幸せだったんだな、と感動するような良い顔には殆ど出会えなかった。大抵の人は日頃の顔つきが死に顔になるみたいですよ。世の中への恨みが骨髄にまで達していると言わぬばかりの!』
   
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死ぬ準備

    ここまでの話を68歳になる別のゴルフ仲間に紹介したら『結婚している子供が2人いるけれども、私は遺産の全てはワイフに残す計画。その後の処理はワイフに一任。石松さんのご意見は?』
   
    『諸手を挙げて賛成しますね。私も全く同意見です。4年前、長男がトヨタに就職したとき、自宅から7km離れた独身寮に追い出しました。親子同居など考えただけでも煩わしいし、死が近づいても面倒を見て貰う気は全くないから。下宿していた学生時代から起算すれば既に10年も別居。実質的には、赤の他人も同然ですよ』

   私には死ぬ準備ができていないことに気付いたものの、まだその準備をする気は全く起きない。とは言え、入り口には少し近づいた。末っ子が社会人になった瞬間(平成10年4月1日)、掛け捨て生命保険は中止し、掛け捨ての火災保険および自動車任意保険とホールインワン保険のみにした。

   海外旅行保険は高いので一切入らず、夫婦とも葬式代はゴールドカードに自動的に添付されている5000万円の死亡保険のみが頼り。年1万円の会費は名古屋空港のラウンジの生ビール飲み放題で、少しだけ回収。最近利用した福岡・成田・札幌空港のラウンジはけちになり、アルコールは最初の一本のみが無料。がっかり。

   海外訪問国数が年齢を超えたら死ぬ準備を開始しようと決心。今年4/15〜27にポーランド・チェコ・スロヴァキア・ハンガリーに行ったとは言え、まだ45ケ国。なかなか歳に追いつけない!。歳が、追いかけた虹のようにどんどん逃げていく!。

   賢人各位、『死ぬ準備』は、万全でしょうか?
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