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随想
           
終の棲家の建設前編(平成23年1月1日脱稿)

   平成14年12月19日に胃がんの外科手術を受けた後、食道がんの治療で4回も入院した。無意識のうちにもその影響を強く受けたのか、我が余生の短さを覚悟し死ぬ準備を徐々に開始。そのテーマの一つが我が終の棲家となる墓の建設だ。

   幸い我が家から10Kmの森の中に398,000平米の豊田市営墓地があり、毎年秋に墓地の公募がある。平成21年夏、豊田市役所公園課で応募に必要な資料を受け取った。その中で、墓地の応募資格には手持ちの納骨があること、という奇妙な条件を発見。

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はじめに

   40年も前に市営墓地を確保しているトヨタ先輩もいる。市営墓地の開設当初は生前(生まれる前ではなく、死ぬ前の意。死前なら分かりやすいのに!)に本人の墓地を確保出来たが、いつの間にか条件が変わっていた。このままでは妻子に負担を掛けずに自分の墓を生前に作ることができない、という難問に突き当たった。

   半ば呆け始めていたはずの我が頭は、大学入試問題を解くかのごとく突然フル回転。市役所の提示した条件の妥当性の議論は無意味。形式主義の役所と対決するには、こちらも形式主義で武装せざるを得ないと結論。『目には目を、歯には歯を』だ。

   『人骨がありさえすれば、応募できるのですね』
   『そうです』
   『では、骨を借りてきます。私の死後は、遺族に私の骨と引き換えに借りた骨は持ち主に返却させます』
   『骨があれば応募できます。でも納骨されている墓地の管理人の許可証と、墓地がある市町村長の許可証が必要です。書式も決まっています』
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骨借り手続き

   我が郷里には生家から僅か300mの地、江戸時代に我が曽祖父が確保した山に300坪の墓地がある。曽祖父・祖父・伯父(父の長兄)は何れも夫婦で一組の墓に土葬されている。曽祖父や祖父の子孫は夫々独立し、土葬か骨壷の違いはあるものの、夫々の住所近くの墓地に埋葬されている。父は末っ子なのに曽祖父⇒祖父へと続いた520坪の家屋敷を引き継いだ。我が家こそが石松家の直系になったようなものだ。
   


   父は80歳の時(昭和59年)に3*3mの納骨堂方式の墓を360万円で作った。



   棹石の裏には私を始め我が兄弟の俗名が赤字で彫られている。良く見ると赤字だった父の名前は、墨で塗られて黒くなっている。墓の管理人は長兄だ。



   墓誌には両親と弟の戒名が彫られていた。

   兄と相談の結果、納骨済みの母の骨を借りることにした。石松家では最も新しい人骨だ。長兄に頼んで福岡県遠賀町長の骨の域外持ち出し許可証と、墓の管理人としての長兄の許可証を準備して貰って公園課に提出すると同時に、平成21年度の墓地の募集配置図面を受け取った。

   過去の実績では、選り好みさえしなければ墓地が確保できる程度に墓地は毎年拡張されてきた。面積・眺望などいろいろだ。新規に開発された区画だけではなく、返却された墓地や入手後墓を建てずに返却された墓地などが、飛び飛びだったが色分けされて印刷されていた。





   緩やかな山間部の墓地は、千枚田のような雛壇形式で12箇所ほど開発されていた。私は9番墓所の一番東側の列の中央部にある151番地を選んだ。その列の売れ残りだったため草茫茫。その東の法面(のりめん)の下にも墓地。何よりも見晴らしが抜群。周辺の樹木からも遠く、落葉が舞い込む恐れも少ない。

   151番地の競争率は3倍。籤を引く順番を決める籤を引いたら一番籤が当たった(確率論上からは無意味な手順だが、最初に籤を引きたいと希望する人たちは納得するらしい)。次に本番の籤を引いたら私が当たった。後ろに並んでいた二人に『申し訳ないね。貴方達が籤を引く前に当たってしまって』。気の毒にもそのうちの1人は『今年で連続して3回外れた』そうだ。公園課には籤に外れた人の救済策として、籤に当たる確率が年々高くなるルールは用意していないそうだ。

   市営墓地の永代(えい
いと読む。でも、えいいと誤読する人が何故か多い)使用料は『一平米につき5.1万円』。私営墓地とは異なり、年々の管理費は課されない。我が墓地は3m*3m=9平米。納入期限内に45.9万円を振り込んで一件落着。
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墓の資料集め

   墓の建設は初体験。この世界の習慣には全く無知のまま猪突猛進。友人の中には『蛇の道は蛇(じゃの道はヘビと読む)』のような物知り関係者や高齢者がいなかったが、今やインターネットが古老の代替役を果たしてくれて便利になった。

   週刊ダイヤモンド・週刊東洋経済・月刊プレジデントなどの雑誌は、墓屋や葬儀屋だけではなく守銭奴僧侶にも騙されるな、と言いたげな記事を毎年のように特集している。がんとの闘病中とは言え、私には未だ若干の時間の余裕があると判断し、豊田市中央図書館から10冊の墓石関係の書物も借り出し、納得の行く墓造りにじっくりと暇つぶしも兼ねて取り組むことにした。単なる自己満足とは百も承知しつつ・・・。

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墓屋からの情報収集

   豊田市の隣に位置する岡崎市は良質な石の産地で古来有名。バブル期には300軒もの墓石業者が営業していたそうだ。今や我が国は少子化とは正反対な多死化時代だ。年々葬儀が増加しているからには墓屋は大繁盛かと思いきや、現状は我が事前予想とは正反対だった。過去20年間で業者は気の毒にも半減したそうだ。

   業者が激減した理由はいろいろ。死者は増えても墓を作らない人が増えた。濃尾平野の中心部に位置する安城・刈谷・知立などの各市には墓地に適した山も少なく、お寺の境内の無縁墓の再開発で小さく区切られた1uクラスの小型の墓が増加。

   一方、交通至便な名古屋市の中心部には、位牌と骨壷が収容できるロッカー形式の立体倉庫(カードで情報を入力すると、お参りに来た遺族用の小部屋に安置されている小さな共用の仏壇まで位牌が一分前後で運び出され、厳かなお経が自動的に流れてくる)も増えたとか。やぶ蚊が飛び回っているようなお墓まで、暑いお盆にお花を抱えて出かけるよりは快適なのだ。
   
   おまけに墓屋(石屋)のメイン業務の一つ、和風の庭には必須とされてきた灯篭などの注文もバブル崩壊と共に激減。その上、石材の加工は中国に依存するだけではなく、円高も手伝って価格は4割も暴落。墓屋の仕事は墓地での組み立て作業へと単純化。結局、誇り高き石工(いしく)としての熟練業務は激減。後継希望者も激減し職人の高齢化と共に廃業していたのだ。

   ホームページの中身が充実している専門業者を選び『墓石事情』を聞くことにした。各業者に来宅願って、当世墓事情を解説して貰った。どの業者も分厚い解説書や施工事例の写真集、時には重たい墓石の標本『20cm*20cm*15mmサイズの石板』も持参し、この世界の常識を無料で平均2時間も掛けて講義してくれた。

   石材取引業界にも全国の石屋に通用する記号(品名・品番みたいな文字列)が普及していた。石材は、漢字(日本や中国産の場合。牛岩石とか)や英数字(アフリカやインドなど外国産。G654とか)原産地(日本産は県名、外国産は国名)吸水率・見掛け比重・圧縮強度・標準的なカラー写真を載せてカタログ化されていた。私にとっては文字通り『知らぬが仏』の世界だった。

   我が簡単な希望に合わせて目安として即答して頂いた口頭での概算価格帯は200万円前後だった。乗用車一台分だ。
   
   全く知らなかった世界の事情が少しずつ分かってきた。標準的な和型の墓石の構成部品の夫々にはもっともらしく感じる意味があり、標準価格は棹石の断面の辺の長さ(未だに八寸角とか九寸角と呼ぶ尺貫法の世界)と石材の種類で決まるのだそうだ。

石塔

棹石/竿石(さおいし)。戒名を刻む石ですが、今では『○○家之墓』や『南無妙法蓮華経』等の文字を刻む石にもなっています。

スリン。蓮の華(蓮華)を簡略化した形です。西方浄土の極楽にて蓮華の上で坐禅を組んでいる姿をイメージして下さい。

上台(うわだい/じょうだい)。棹石には戒名、上台の石には名字を刻みます。棹石に名字を刻んだ場合家紋を彫る場合もあります。

中台(なかだい/ちゅうだい)。古い石塔には、中台の石に建て年月日、建て主を刻む石も見受けられました。

芝石(しばいし)又は下台石(げだい)。三段墓の台石です。関東型の場合、花立てや水鉢の台石にもなります。

花立(はなたて)。生花を立てる石になります。

水鉢(みずばち)。お水を入れとく石です。手桶の水はこちらの水鉢に掛けるとよいでしょう。

香炉(こうろ)。お線香用の石です。一度に多くの線香を燃やすと石が割れる場合がありますのでその場合、線香皿を外にだすか、お線香の量を調整して下さい。

拝石(はいせき)。納骨堂の蓋石でもあります。関東型では香炉を拝石の上に置きます。


   世界各地で観光地化されている巨大な墓地は既に海外旅行の折に見学していた。墓石の形は宗教の違いだけではなく、その時代の流行も反映されて千差万別。でも、日本人の墓は観光価値がないと観光旅行業者が判断しているのか、国内団体旅行で案内された体験は無かった。仁徳天皇陵や大名の壮大な墓は見たが、庶民の墓とは別世界だ。

   来宅いただいた墓屋には我が下記のような耐久性などへの簡単な希望を述べ、夫々の自由な発想の元に設計し、図面と見積価格を添えて郵送して貰えるように頼んだ。私には墓の形に関しては希望条件が全く無いと付け加えた。

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我が希望

@ 近い将来に発生が予想されている東南海大地震でも倒壊し難い墓。

阪神淡路大地震やその他の大地震で無数の墓が倒壊した記憶があった⇒耐震構造としての工夫が知りたい。和型・洋型・デザイン型など形式には全く拘らない。

A 10個の標準的な骨壷が収納できる大きさのカロート(納骨室)。

墓は3代に亘る骨壷が収納できれば十分⇒私は生家のある福岡県遠賀町内の母方の墓(僅か4Kmしか離れていないのに!)へのお参りすらしたことが無い。誰だって会ったことも無いような先祖の墓参りには関心がなくなると考えた。

B 寿命は100年。

トヨタ同期生のご子息でトヨタに就職した人は大変少ない(10%未満?)。ご子息は自らの能力を活かせる最適な職を求めて全国へと分散したのだ。我が3人の子供は偶々トヨタへ就職し、夫々縁あって三河の先住民と結婚した。豊田市近辺に孫以下の子孫が住みつく確率はトヨタ同期生の平均値よりも多少は高いと予想するものの、我が墓にお参りする子孫は高々100年後までと推定した。

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設計図

         墓石の鳥瞰図と設計図











                    基礎の二重配筋図





   来宅時に無料で貰った貴重な資料と墓屋が設計してくれた図面とをじっくりと検討した結果、我が墓へのイメージがやっと固まった。その結果、一番気に入った設計図(10枚の内から4枚を載せた)と基礎の二重配筋図(4枚のうち2枚を載せた)を選択し、再び来宅いただいた各墓屋に下記のような相見積もりのお願いを渡して朗々と読み上げた。質問は殆ど出なかった。見積もり条件は論旨明白、疑問の余地はないとの反応だった。
   
   しかし、墓屋からは異口同音に『基礎は過剰品質では?』との発言があった。でも私は『どんな地震にも倒壊し難い墓を造りたい。この基礎と墓石とが一体構造となるような工事をお願いしたいのだ。倒壊するような墓を造ってきた貴方達からこの設計の妥当性の評価を聞きたいのではない。この設計通りに施工すれば費用が幾らになるのかの見積もりをお願いしているのだ。

   今住んでいる450トンの鉄筋コンクリート住宅の設計を私は36年前に依頼したときにも、同じ体験をした。私の設計条件は面積あたりの鉄筋と生コンの使用量は公団住宅の二倍にせよだった。一級建築士は無駄だといったが、私がお金を出すのだと発言。その後、建設省は耐震構造の基準を引き上げ、全国の公共建築の建替え指令を出した』。

   最安値が100万円を越えた場合でも工事を中止するのではなく、設計図を再検討し石材の種類も変更するなど無駄を省いて後日再見積もりをお願いすると補足した。二回目の相見積もりでは100万円には拘らずに一発勝負と付け加えた。

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相見積もり

                                                                          平成22年9月1日
                                                                                       石松良彦

石寅  0120-080-085 山崎 悟様
石のセンター稲葉 0120-087-014 関  浩様
石のみやび  0120-88-4148 上野 雄一様
稲垣石材店  0564-31-6879 稲垣 寿様
大野屋  0120-44-1888 瀬戸川 仁道様
小野石材  0564-24-6360 小野 文博様
岡崎墓石センター 0120-88-3347 鈴木 健治様
加納石材店  0564-31-6991 加納 英行様
柴田石材工業所  0120-148-485 柴田 昌司様
矢田石材店  0120-336-772 矢田 敏起様



                        
墓石工事の見積もりのお願い

   残暑の候 貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。

   さて、昨年年末以来、石松家の墓建設に先立ち各種資料をご持参の上、墓建設に関して各2時間ものご説明(一種の講義)を賜り有難うございました。その折に、何れ工場や展示場を見学させて頂きたいとの希望を申し出ていましたが、10社からのご説明を聞いた結果、見学するまでもなく現状を理解することが出来、見学は勝手ながら中止していました。

   各社から頂いた設計図や資料を比較検討した結果、『石寅』のご提案に一番魅力を感じました。石寅の岩田店店長山崎様に電話で相談し、設計図を10部コピーしていただきました。ご厚意に感謝しています。

   この図面でお見積もりを10社にお願いすることにしました。石材の種類もいろいろありますが、総合的に最も安いお見積もりをご提出して頂いた会社に工事をお願いすることに致します。

   設計図に改善項目を発見された場合には、独自の新図面でお見積もり下さい。よろしくお願いいたします。

     
                見積もり条件(順不同)

@ 提出期限 9月30日(木)。
A 発注予定日 11月1日(月)。
B 耐久性の目標は100年。

C 耐震性は東南海地震に耐える程度の強度。
D カロート(納骨室)は標準的な骨壷が10個入る大きさ。
E 石材の種類は問いませんが、石種は部品ごとに牛岩とかG614と記入。

F 基礎部分と墓石部分とは分離して見積もり書を作成してください。使用する生コンは製造後90分以内に使える墓地の近くの工場に発注して下さい。石寅に発注することになった場合は豊橋市から豊田市までの距離が遠すぎるため、私が石寅の下請けになって豊田市内の生コン会社から調達します。
G 見積もり金額は、見積もり比較の便宜上から、材料代・据付工事費(人件費など)・経費(運賃・事務経費など)・消費税などに細分化してください。
H 基礎部分の資材は型枠・配筋・生コン・砂利などと分けてお見積もり下さい。

I 契約金は支払いません。工事完了後、検査に合格すれば翌日以降の金融機関の最初の営業日に全額をご指定の口座に三井住友銀行豊田支店から振り込みます。現金の手渡しは安全のため致しません。
J 何処の会社に発注しようとも、契約金額の5%を設計料として石寅に支払うと山崎様に提案しましたが、辞退されました。感謝してはいますが、相見積りで石寅を特別扱いにすることは致しません。
K 設計図はご来宅いただいたときに直接お渡しします。3案あります。

L 私は各社の真剣なお見積もりを尊重し個々の値引きの相談は致しません。しかし、契約を交わした会社とは工事に先立ち、設計の細部のほんの僅かな変更(石種の変更など)については別途相談、その結果変化する見積もりは加減算します。
M 見積もりのご提出が無くても催促は致しません。辞退されたと判断します。
N 基礎工事開始日・生コン投入日・墓石組み立て日には私も立ち会います。

O 私は11/10-11/25には地中海・エーゲ海5ヶ国クルーズに荊妻と共に参加しています。その間は工事の立会日と重ならないように計画してください。
P 来春までの工事完了を想定していますが、遅れても遅延金は請求しません。天候の影響もあり、足場が悪いときの重機の搬入も避けたく、安全で確実な作業を優先します。
Q 総工事費の最安見積もりでも100万円を越えた場合には、工事を延期します。
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見積もり結果の検討

   何人かの友人に墓屋に渡した我が見積もり依頼書をメールで送り、感想を聞いた。私としては何一つ無理な条件は提出していないつもりだったが、友人達からは異口同音に『厳しすぎる』との予期せぬ感想が返信された。

   10社の内数社からは友人達の感想を裏付けるかのような辞退との返信を貰ったが、過半数の石屋からは真剣に検討した詳細な設計図と見積書を受け取った。嬉しかった。

@ 基礎工事は60〜27万円にばらついた。一番安価な見積もりを出したみよし市(豊田市の隣の市)の建築土木業者に発注した。過去20年近く、我が家のこまごまとした補修やリフォームをお願いしていた元工務店経営者梅村氏の娘婿だった。

A 墓石工事は260万円〜100万円までばらついた。最安値の100万円を提示した豊橋市の石虎に発注した。100万円とは私が当初から目標としていた参考までの指値だ。

   石虎の岩田店山崎店長・梅村氏・建築土木業者には墓地に集まっていただき、図面の最終確認をすると共に、工事の段取りの打ち合わせをした。寒期に生コン工事をするのは凍結の恐れもあり、避けるべきとの助言があり、工事の着手は来春と決まった。



   私は山崎店長に設計料として5万円を支払いたいと申し出たが、強く辞退された。『肉体労働以外の働きに対しては、会社の売り上げとして計上される現金は受け取るべからず』との社長方針だそうだ。

   その対案として豊橋市から程近い渥美半島の先端にある伊良湖(いら
と読む)ガーデンホテルの一泊二食のクーポンを、個人としての山崎店長ご夫妻用として二枚無理やり受け取って貰った。同世代の長男が大樹に隠れてグータラ勤務をしているのとは対照的に、中堅企業の管理職として頑張っている山崎氏の仕事への真摯な情熱に心を強く打たれ、ささやかではあっても感謝したかったからだ。

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蛇足

@ 我が戒名は『世界百余国漫遊大居士』と自作し、墓石に彫って貰うことにした。

百余国とは魏志倭人伝
(楽浪海中に倭人有り、分かれて百余国を為す)からの借用。漫遊とは水戸黄門漫遊からの借用。大居士とは徳川家康の戒名(東照大権現安国院殿徳蓮社崇誉道和大居士)からの借用だ。

A 仏教界とは数年前に訣別した。

ある住職に『戒名にはどんな価値があるの?』と質問した。『死者が極楽浄土に旅立つための切符みたいなものです』『極楽浄土とはどんな場所ですか?。私は証拠主義で生きてきたエンジニアです。貴方が見てきた極楽浄土とはどんなところだったか、証拠を挙げて具体的に説明してください』。『・・・・』。

世界の仏教国で戒名を授けて遺族からお金を収奪する習慣は日本にしかない。かつてローマカトリック教会が『免罪符』を発行して信者からお金を毟り(むしり)取った愚行と同じだ。私は宗教改革を起こしたマルティン・ルターの猿真似を決意。我が葬儀に僧侶は呼ばず、位牌・仏壇・法事も不要と遺族に遺言する予定だ。

蝉の抜け殻のようなボンクラ住職が、何故か目線を高くして上から話す幼稚な法話(作り話と前置きをすれば多少のガス抜きにもなるのに、死後の世界を尤もらしく偉そうに話すのが無性に不愉快!)を、我慢して聴かされるときに感じる苦痛に私は堪えられないのだ。

B 石造建築の耐震性確保

地震で倒壊しにくい墓とは重心を低くした構造であるのは明白。鏡餅を重ねただけのような和型は倒壊すると考え、デザイン墓を選定した。

墓石業者も耐震構造と称する墓を作り始めてはいた。石材の間に緩衝材を挟み接着剤を使って固定する方法では耐久性は30年程度だそうだ。そのため、ステンレスの棒を内部に埋め込む方法も考案されてきた。

石造建築の耐震補強の歴史は浅い。
オスマン・トルコ帝国によって火薬庫として使われていたアテネのパルテノン神殿はヴェネツィア共和国の攻撃によって1687年9月26日に爆発させられた。

大理石のブロックの固定には腐食を防ぐために鉛のコーティングが施された鉄製のH型金具が元々は用いられていたが、19世紀の補修ではこのようなコーティングが為されなかったため錆など腐食によって金具が膨張し、大理石を割ってしまうなど損傷を拡大させていた。そのため、金属製器具は強さと軽さを兼ね備え、腐食にも強いチタンが用いられるようになった。



平成22年11月17日にパルテノン神殿に再参詣(22年前の初参詣時には修復作業計画立案のために大勢の関係者が調査中だった)した時は、その修復工事の真っ最中だった。こちらは1,000年単位の耐久性確保が目標だろうが、我が墓は100年なので高価なチタンの代わりにステンレスを採用する予定だ。

小なりと雖も我が墓も,縁石込みでは推定5トンになる墓石部と10トンに達する基礎部とをどのように連結するかが課題だ。10トンのばね下重量*地震の加速度=墓石部への加振力となるので、連結部の構造には多少の工夫はせざるを得ない。豊田市営墓地内の全ての墓石が倒壊しても、我が墓だけが健在とまでは欲張らないが・・・。

追伸

   終の棲家の建設(後編)は工事着手から完成までの報告として後日報告予定。

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読後感

   前編全19ページを印刷して読んだ。こういう充実した墓地計画書は初めてだ。これからも現れないだろう。これだけの才能・執念を持った人物というのはまさに「鬼才」だ。
   
   しかし何事にも玉にキズ。九州にご先祖の立派な墓をもつ、本人も親族一の神童で、トヨタに入り、億万長者
(勝手な推定)の成功者が「百万円予算+うるさい注文」とは何事か?これでは墓石業者の怨念が完成品に染み付いて末代まで祟るだろう。生まれ変わるとしても、トヨタ技術者には生まれ変われず、動物なら蛇・なめくじか人間なら街のゴキブリだろう。

   墓石代金は戒名代のようなもの。本人の遺徳を表すものだから、岡崎か名古屋の徳川家出入りの墓石業者に一千万円を渡して、後は「ヨキニハカラエ」。これで立派な墓ができる。
   
   不景気は墓石業者には厳しい。不要不急の支出だから。今なら1,000万円で鬼才に相応しい墓ができる。設計図も原価計算もなしだ。墓には墓石業者の感激が自ずと現れる。それが遺徳だ。東海地震からも守られるだろう。

   本人は、「乾いたタオルを絞る」というトヨタ生産方式を墓石発注にも適用したようだが、それは場違い。TPOが違うね。

   墓石のデザインはいいね。しゃれている。安普請の和式墓と思ったが、それよりはずっとイメージはいい。でもね、所詮100万円は100万円だ。これで「棺を覆って人定まる」。旅行に、がん治療に、墓石に東奔西走しても、最後は100万円の石の下。やはり最後のホームランを打って墓地に入るべき。

   設計図は力作だから5万円払って権利を取得し、トヨタ関係者に供覧したら。

その2。

「生まれ変わり云々」については筆が滑った。深く謝罪。でも、耐震構造ではあっても100年間入居者が満足できるかどうか?最近は実家の墓に入りたいという女性も多いらしい。

まず、勲二等(故岳父が受けた叙勲)令嬢が満足できるかどうか?前途有望な秀才との縁談ということで、九州からはるばる豊田市に来たはずだが、億万長者夫妻の終の棲家が、「年金2月分の予算+うるさい注文」ではね。

ご長男夫妻にとっても、物足らないのではないか? 嫁さんの実家の墓以下だと、末広がり予定のクリニックに縁起でもない、と女医さんは結局ご主人を連れて実家の墓に戻るということになりかねない。

嫁いだ娘さんは婚家の墓に入るのだろうが、これも人生後半、ケチケチ墓の邪気に当てられて、人生が狂い、出戻りになるかもしれない。小泉総理の言う「まさか」という坂である。

孫にも「立派なおじいさん」という印象は残らないだろう。その位なら九州に戻って、実家の墓の隣に序列の範囲で立派な墓を作った方が良いね。茂原(千葉県・友人の郷里)では墓地は部落単位。1戸で墓地があるとは、立派な家系だ。

リニアはいずれ博多まで延長。時速1000キロ運転すれば、あっという間だ。飛行機もある。遺産を墓参基金にすればいい。

@ トヨタ同期・東大(工&経)一年で依願退職・実妹は住職と結婚⇒門前の小僧式に葬儀や墓事情にも詳しい・三度目の奥様は北京美人・私とは終わり無き舌戦仲間・我が家の80A契約に比し30Aのミニ住宅で満足している超堅実派

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お墓作り「奮闘記」の前篇、興味深く読ませて頂きました。

12月初めに家内を亡くし、長男でない私としては、新しいお墓を建てる必要があります。しかし、石松さんのマネをしようとは思いません。(もし真似たいと思っても能力的にとても無理だと自分で解っているから)

幸いに近くに千葉市の公園墓地がありますので、「芝生墓地」を6月の抽選で申込むつもりです。

とはいっても、石松さんのような手法はとても取れず、信用できそうな墓石店(親戚の紹介で葬儀をお願いしたセルモ社の委託業者の一つ)へお願いすることにしております。

世の中、悪い人ばかりとは思っていないので特に心配はしておりません。(もしダマサれて変なモノを掴まされたらそれはそれで私やホトケ様の運が悪かったのだと諦めることにします)

A 大学級友・工

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こんな「墓地計画書」を見たのは初めて!いろいろな意味で驚嘆。読後感@にも驚嘆!こんな思い切ったことを云う人にも初めて!

もし、この「墓地計画書」の絶賛派と批判派を敢えてつくり討論させたら、批判派から@の意見が出るかもしれないとも。

私は絶賛派だが、なぜか真似る気にはならない。(すでに建造済みであることは別にして)自動車 A車とB車、どちらも100万円でどれを買うかとすれば、乗り心地、走行安定性、燃費などを当然のことながら比較する。

墓の場合、購入後 A墓とB墓を比較することはまずない。子や孫に伝わるメッセージも「祖父が100万円で墓をつくってくれた」と言うだけで、値打ちか割高かは関係ない!ならば選考の過程で気持ち良く決着するとは限らないことに苦労することも無いかと。

気力・体力とも石松さんより老けこんでいることを実感しました。

自己満足に過ぎない趣味の世界なのに、正否や価格是非の話題も出てくると困惑

B 今年喜寿を迎えられる超元気なトヨタ先輩・工・ゴルフ&テニス&温泉旅行仲間

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読後感の催促をいただきましたが、未だに出来ずに申し訳ない。タイのインターネット状況(ここ柏屋旅館かも)から小生の頭が何とか動く午前中は、貴殿のホームページを読んでいると(何しろ長いので)突然切れてしまい、興ざめになってしまい読後感を書くまでなりません。

夜は(今は11時)割りに安定してますが、飲み屋から帰ってすっかりいい気分。もう眠気が先行、PCの前に座って難しい石松論文を読む気力なしです。おやすみなさい。

その2。

今朝はここバンコック柏屋旅館のインターネット状況は良さそうで、途中で切れることもなく読み通すことができました。そんなわけで読後感を申しあげます。(途中で切れないことを願いつつ)
 
『全く石松さんらしくない』ことをやられるもんだという印象と『いや、やっぱり石松さんらしい』行動パターンというのが読後感です。
 
まず『全く石松さんらしくない』のは坊主とケンカして絶縁した仏教や、宗教とはおよそ遠いところにいる貴殿が、どうして自分のお墓に拘るかと言うことです。

九州に立派な石松家の墓所があるのに豊田市に墓を作る気になったのかよくわかりません。しかも子や孫に100年もお参りさせるような(参らせるということは、俺に関心をもて、俺に感謝して、尊敬せよということ)ことを強いるようなことをするのは石松さんらしくない。

貴殿には立派な子供さんやお孫さんも
おられれ、貴殿の遺伝子は物理的にしっかり引き継がれているので心配ないではないですか。『死んだら庭の隅か海にでも散骨してなにも残すな』というのが最も貴殿らしいと思ってました。
 
それでは『お前は死んだらどうするつもり?散骨する?』と聞かれそうですが小生は今まで終の棲家お墓なんて考えたこともありません。地元刈谷の檀家寺にある墓所の先祖代々の墓にはいるのが当然と言うか自然で、黙っていても子供たちはそうするだろうと思ってます。丁度自分の親をそうしたように。
 
『石松さんらしいところ』はお母さんの遺骨まで借りてきて役所とやり合って墓地を手に入れたところなど、古希を過ぎても反骨精神は衰えませんね。

100万円の物件で業者を集めて競争入札をさせるなど、業者泣かせとは言わないが、自分の楽しみだけで、世の中の常識外のことをやると迷惑なことになる。もっとも常識外のことをやられるのが『石松さんらしい』真骨頂ですが。

小生などはもともと『流れのまま』に生きてきた芯のないような人間。古希を過ぎて益々面倒なことはやりたくない。まあ若い人たちには迷惑をなるべく掛けずに逝きたいと思ってますが・・・・・さてどうなることやら。
 
石松さんは弘法太子の高野山に行かれたことがありますか(関心がなく行ったことはありません)。あそこには古今東西というか、あらゆる宗派のお墓、有名、無名の人の墓が丁度お墓のテーマパークのようにあります。ぜひ自分のお墓の完成までに見学に行かれるのをお勧めします。
 
自分で戒名をつくってそれを墓石に彫ると言うのは面白い。『世界百余国漫遊大居士』も悪くはないが、もう少し自分の性格などを盛り込んだ戒名は考えませんでしたか。例えば『徹底一刻正義大居士』とか。これぞ『石松さん』らしいというのにされてはどうですか。まだ間に合います。

小生のトヨタの先輩で功なり名をあげ(少し)金を作った人が、白血病で発病後短時間で死にました。その人も自分で戒名を作って死にました。『俊幸院全力疾走大居士』でした。俊は本名の一つ、幸は奥さんの名、世の中を全力疾走で逝ってしまった、という意味のようです。トヨタに関しても『全力疾走』という本も書いている人です。
 
『終の棲家』後続偏を期待してます。業者とケンカして墓を作ることはやめた、そしてその顛末記などはきっと面白い。

C トヨタ先輩・工・奥様に先立たれ、温泉とレストラン付き・近くの病院と連携している老人ホーム(1DK)を購入済み・海外駐在歴20年以上の国際通・檀家寺の改装に100万円寄進された方

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お墓については切なくなりました。お墓をつくると長生きしますから、いずれにせよ良かったです。人間って息絶えても埋めなければならないので面倒です。死についてはまだ考えた事もありませんが、ショックでした。

D イスラエル在住のあったことも無い日本人

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